欧州委、投資スクリーニング制度の運用に関する年次報告書を発表

(EU)

ブリュッセル発

2022年09月08日

欧州委員会は9月2日、2020年10月から適用を開始した対内直接投資審査規則外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(2020年10月13日記事参照)の2021年の運用状況に関する年次報告書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。この報告書は、2021年から発行されており(2021年11月29日記事参照)、今回で2回目となる。欧州委のバルディス・ドムブロフスキス執行副委員長(経済総括、通商担当)は、EUは外国投資に対してこれまでどおり開かれていると強調。ただし、EUの開放性は無条件ではなく、均衡が取れたものでなければならないとし、EUはこの均衡をとるための権限を引き続き強化すると述べた。

同規則は、安全保障や公の秩序の観点に基づく外国投資の審査に関して、各加盟国の投資スクリーニング制度を前提に、欧州委・加盟国間の協力メカニズムを導入するものだ。同規則は、EUレベルでの投資スクリーニング制度を設置するものではなく、審査権限はあくまでも各加盟国にある。一方で、同規則に基づく協力メカニズムを通じて、加盟国は外国投資に関する情報を欧州委へ提供することが求められ、欧州委は必要に応じて加盟国に対して意見を出すことができる。欧州委の意見には法的拘束力はないものの、加盟国はこの意見を最大限考慮した上で、外国投資の承認・不承認の判断を下すことが求められる(注1)。

欧州委は、全加盟国に対して、投資スクリーニング制度を設置するよう要請しているものの、設置自体は同規則上の義務とはされていない。報告書によると、2022年6月時点で、27加盟国中18の加盟国が投資スクリーニング制度を設置済み。ベルギー(2022年6月6日記事参照)など7加盟国も導入向けた手続きを開始しており、導入予定がない加盟国は、ブルガリアとキプロスのみとなった。

協力メカニズムの運用状況に関しては、2021年で13の加盟国が414件の外国投資を欧州委に通知した。欧州委は、そのうち86%の外国投資については詳細な調査は不要とし、11%については加盟国に対して追加の情報提供を求めた。欧州委が最終的に意見を出したものは、前回の報告書と同様、3%以下だった。欧州委が通知を受けた外国投資の評価額は、最小1ユーロから最大290億~310億ユーロと非常に幅が広く、全体の34%が5億ユーロ超、残りの大部分が5億ユーロ以下だった。

投資元の国別でみると、米国が40%と最も多く、次いで英国が10%、中国が7%を占めた。また、ロシアは1.5%以下だった。欧州委が追加の情報提供を求めた外国投資において、最も多かった分野は、製造(防衛、エネルギー、航空、半導体、製薬など)、情報通信技術(ICT)で、この2分野だけで76%を占めた。

なお、加盟国レベルでの審査状況に関しては、加盟国全体で、審査対象となった外国投資の73%が条件なしに承認され、23%が緩和措置など一定の条件付きで承認された。加盟国が最終的に不承認とした外国投資は、全体の1%だった。

欧州委は同日、二重用途物品の輸出管理規則外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(注2)に関する2021年版の運用状況報告書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますも発表した。加盟国は、1年で約4万件の二重用途物品の域外輸出申請を審査し、そのうち559件(全体の約1.4%)の申請を不承認にしたとしている。

(注1)欧州委は2022年6月に、同規則のFAQ(よくある質問)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を更新している。詳細はこちらも参照のこと。

(注2)二重用途物品の輸出管理規則の詳細は、ジェトロ制度情報PDFファイル(311KB)を参照のこと。

(吉沼啓介)

(EU)

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