24年ぶりの対ドル円安下、アジア大洋州主要通貨も軒並み安

(ASEAN、南西アジア、オセアニア)

アジア大洋州課

2022年09月12日

日本の対ドル円相場は、2022年9月7日に1998年8月以来の約24年ぶりの円安水準の1ドル=144.5円を記録した。その後も140円台が続いている。世界的なインフレ加速の要因となったロシアによるウクライナ軍事侵攻前の2022年2月23日を100として、9月9日までの対ドルでの減価率をみると、日本円は、この間に19.2%減価した。同様に、ASEAN、南西アジア(インド、バングラデシュ、パキスタン、スリランカ)、オーストラリア、ニュージーランドといったアジア大洋州の主要通貨の動きをみると、全ての通貨が対ドルで下落した。中でも、スリランカ・ルピーの減価率は43.8%と最大だった(添付資料表参照)。続いて、ラオス、パキスタンが2割以上減価した。他方、ベトナムは0.6%減とほぼ不変、カンボジア、インドネシア、ブルネイなどのASEAN、オーストラリアの減価率は限定的だ。

スリランカ・ルピーの大幅減価は、スリランカが経済危機の渦中にあることに起因する。現在、IMFの事務レベルでは、同国支援の方向がまとまり、今後の通貨反転のカギはIMFによる支援の実行に加えて、各国支援の実現性にある。ラオスについても、危機のリスクが迫っている。格付け会社のフィッチは8月4日に、ラオスの長期外貨建て発行体デフォルト格付け(IDR)を、資金調達の手段が限られることや急激なインフレなどを踏まえて、「CCC」から「CCC-」に引き下げた(2022年9月7日記事参照)。

世界経済が減速の様相を強める中、通貨の下落率が限定的だったことからも分かるように、ベトナムの経済は好調だ。ベトナム統計総局は6月29日、2022年第2四半期(4~6月)の実質GDP成長率(推計値)を前年同期比7.72%と発表した。成長率は第1四半期(1~3月)の5.05%から加速した(2022年7月1日記事参照)。結果的に、経済の基礎的条件(ファンダメンタルズ)を反映する為替レートの減価も限られている。カンボジアについて、アジア開発銀行(ADB)は4月に、好調な輸出と直接投資の拡大から、2022年の経済成長率は5.3%と前年から拡大すると分析した。また、オーストラリアは堅調な経済に加えて、断続的な利上げが為替レートの下支え要因となっている(2022年9月9日記事参照)。

(新田浩之)

(ASEAN、南西アジア、オセアニア)

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