ドイツ、ロシアからのガス供給量減少に伴い「警報」を初めて発令

(ドイツ、ロシア、ウクライナ)

デュッセルドルフ発

2022年07月04日

ドイツ経済・気候保護省は6月23日、「ガスに関する緊急計画外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」に基づき、レベル1~3のうちレベル2の「警報(alert)」を初めて発令外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。3月30日に発令したレベル1の「早期警戒(early warning)」(2022年4月12日記事参照)から引き上げた。

今回の発令の背景には、6月14日以降ロシアがドイツへの天然ガスの供給量を減らしていることと、ガス価格の高止まりがある。天然ガス貯蔵施設の貯蔵率は23日時点で59%と前年より高いものの、両国をつなぐ天然ガスパイプライン「ノルドストリーム1」経由の供給量が通常の40%程度にとどまり、さらに減った場合、ガス貯蔵法で定めた11月1日時点の貯蔵施設の最低貯蔵率90%(2022年4月4日記事参照)を達成できない可能性が高い。

連邦政府は、既にさまざまな対策を講じている。まずは、発電における天然ガス消費の削減だ。2021年に、天然ガスは電源構成の約15%を占めた。これを削減するため、運転予備力として停止中または2022、2023年に廃止予定だった褐炭・石炭ならびに石油火力発電所を、電力の安定供給確保のため一時的に稼働する予定。政府は現在、必要な法改正を進めており、7月8日の関連法案可決を目指している。同法律により、2024年3月31日まで、発電分野において天然ガスの褐炭・石炭および石油での代替を可能にする。また、天然ガスを利用する産業界に対して消費の節約を促すような、天然ガスのオークション制度も夏に開始される予定。なお今回の段階では、政府の天然ガス市場への直接介入はない。一方で、政府は6月22日、供給を確保し貯蔵施設の貯蔵率を高めるため、ドイツ国内の全てのガスパイプライン事業者11社が共同設立した法人トレーディング・ハブ・ヨーロッパ(THE)に、天然ガス購入用資金としてドイツ復興金融公庫(KfW)を通じて150億ユーロの与信限度枠を提供すると発表した。このほか、ロベルト・ハーベック経済・気候保護相は、警報発令の際の記者会見で「企業や公的機関、一般家庭での可能な限りの天然ガス消費節約が必要だ」と強調した。

現時点では、天然ガスの供給は不足しておらず国内生産に支障はないが、エネルギー価格高騰により、多くの企業はコスト増や値上げを経験している(2022年6月14日記事参照)うえ、さらなる物価上昇の可能性が非常に高い。

多くの経済団体が声明を発表し、今回の警報発令に理解を示した。各団体の声明では、エネルギー節約の必要性や、ガス調達のコスト増を供給会社と需要家とで公平に負担することが重要だといった指摘もあった。

(ベアナデット・マイヤー、作山直樹)

(ドイツ、ロシア、ウクライナ)

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