エネルギー安保の第3次進捗報告書を発表、FSRU5隻目の設置も明らかに
(ドイツ、ロシア、ウクライナ)
デュッセルドルフ発
2022年07月29日
ドイツ経済・気候保護省は7月20日、「エネルギー安全保障の第3次進歩報告書」を発表した。同報告書は、ロシアによるウクライナ侵攻以降、ドイツがエネルギー安全保障の確保のために実施したことや今後の見込みをまとめたもの。3月25日に第1次報告書(2022年4月6日記事参照)、5月1日に第2次報告書(2022年5月6日記事参照)を発表していた。
今回の第3次報告書では、第2次報告書の発表以降、ロシアへの天然ガスの依存度をさらに低減することができたが、課題は山積しており、引き続き包括的な努力が必要だと結論付けた。
報告書の中で、5月以来実施した取り組みとして、例えば、6月23日のドイツ政府の「ガスに関する緊急計画」のレベル2「警報(alert)」の発令を挙げた(2022年7月4日記事参照)。ロシアのドイツ向けガス供給量削減を受けたものだ。また、7月12日に施行した第2次改正エネルギー確保法では、ガス供給事業者が厳密な条件の下で天然ガス購買価格の上昇分を顧客へ転嫁することや、エネルギー分野における重要インフラに係る企業への救済措置を講じることを可能とした。
さらに7月14日には、発電分野において天然ガスが不足した場合、特に石炭、石油で代替することを可能にする政令を施行した。同政令により、2022年、2023年に廃止予定だった褐炭・石炭ならびに石油火力発電所を、電力の安定供給確保のため一時的に稼働できる。なお、政府として2021年11月の連立協定書(2021年11月26日記事参照)以降掲げている、「理想的には2030年までに石炭・褐炭火力発電を廃止する」という気候保護の目標には変更がない。
5隻目のFSRUの設置を発表
連邦政府は、液化天然ガス(LNG)の輸入に向けたインフラ整備も進めている。既にエネルギー大手RWEとユニパーを通じて浮体式LNG貯蔵・再ガス化設備(FSRU、注)4隻をチャーターし、そのうち2隻はドイツ北部ニーダーザクセン州ウィルヘルムスハーフェン市とシュレスビヒ・ホルシュタイン州ブルンスビュッテル市に設置するとしていた(2022年5月17日記事参照)。7月19日には、3隻目と4隻目の設置場所を明らかにすると同時に、新たに5隻目を設置予定だと発表した(添付資料表参照)。いずれもドイツ北部に設置予定で、2022年末以降に順次稼働していく予定だ。
(注)Floating Storage and Regasification Unitの略。陸上にLNG基地をつくらず、貯蔵・再ガス化設備を加えた専用船を洋上に係留する。
(ベアナデット・マイヤー、作山直樹)
(ドイツ、ロシア、ウクライナ)
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