エネルギー安全保障の進捗報告書を発表、ロシア産エネルギーの代替が進む

(ドイツ、ロシア、ウクライナ)

デュッセルドルフ発

2022年04月06日

ドイツ経済・気候保護省は3月25日、「エネルギー安全保障の進捗報告書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。同報告書は、ロシアによるウクライナ侵攻以降、ドイツがエネルギー安全保障の確保のために実施したことや今後の見込みをまとめたもの。ドイツはロシアへのエネルギー依存度を下げており、特に石油と石炭において進捗があるという。

まず、これまでに実施していることとして、少なくとも7億立方メートルの天然ガス購入プログラム立ち上げ、液化天然ガス(LNG)輸入ターミナル建設に関する覚書締結(2022年3月11日記事参照)、ガス貯蔵法の成立と施行に向けた取り組み(2022年4月4日記事参照)、石炭の調達と備蓄の推進、浮体式LNG貯蔵・再ガス化設備(FSRU)(注)の設置に向けた調整、などを挙げた。

石油については、2021年はドイツ国内での消費量のうち約35%をロシアからの輸入に頼っていた。ロシアとの既存契約は更新せず、調達先を変更することで、ロシアへの依存度を2022年末までにはほぼ0%とすることを目指す。

石炭については、ドイツ国内での消費量のうち約半分をロシアから輸入している。火力発電所や鉄鋼業界において使用する石炭の他国産への切り替えを進めており、2022年の秋までにロシアへの依存度を0%にすることが可能だという。

天然ガスについては、2021年のロシアからの輸入量は460億立方メートルにのぼる。これまではドイツ市場に流通する天然ガスは平均すると約55%がロシア産だったが(2022年3月22日記事参照)、2021年第1四半期には40%にまで減らすことができた。これを、他国からLNGを購入することで大幅に代替することを目指す。また、2022年第1四半期には、オランダとノルウェーから天然ガスを調達している。エネルギー大手のRWEとユニパーを通じたFSRU3隻の設置も進めている。このFSRUにより、2022~2023年の冬までに75億立方メートル、2024年の夏までに約270億立方メートルを供給できる見込み。さらに、80億立方メートルの再ガス化能力を持つLNGターミナル(2022年3月11日記事参照)も2026年から稼働の予定だ。このほか、企業や一般家庭におけるガス消費の削減により、2022年末までに天然ガスの消費量に占めるロシア産の割合を30%までに、エネルギー源の多様化、水素や再生可能エネルギーの拡大により、2024年の夏までに10%までに削減が可能と見込む。

ロベルト・ハーベック経済・気候保護相は「ロシア産エネルギーへの依存度は徐々に低下しているとしても、禁輸は依然として時期尚早だ」と警鐘を鳴らした。

(注)Floating Storage and Regasification Unitの略。陸上にLNG基地をつくらず、貯蔵・再ガス化設備を加えた専用船を洋上に係留する。

(ベアナデット・マイヤー、作山直樹)

(ドイツ、ロシア、ウクライナ)

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