物流は改善傾向も、日系企業9割が収益マイナス予想、上海日本商工クラブが実態把握

(中国)

上海発

2022年06月07日

上海日本商工クラブ(注)は6月2日、「上海市封鎖管理による事業への影響等に関する実態把握(第3回)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」の結果を公表した。調査は5月27日~31日に実施し、上海日本商工クラブの各業種別部会正副部会長、正副分科会長、各地域連絡会正副会長、事業環境委員会メンバー会社、製造業関連企業のうち129社から回答を得た。今回の実態把握は、企業の操業再開に必要なホワイトリストおよび申請許可制度が必要な状況下で実施したもの。6月1日以降、申請許可制度は廃止となっている(2022年6月1日記事参照)。

今回の実態把握によると、上海に工場を持つ製造業企業のうち、操業許可を取得した企業は89%にのぼった。工場への制限・稼働状況において「3割以下の生産」と「半分程度の生産」と回答した企業は約6割、「7割以上の生産」と回答した企業も2割あった一方、14%が「全く稼働していない」としている。操業率回復にむけた課題(複数回答)では、「物流の回復」(73%)、「従業員の宿泊設備確保」(63%)、「従業員の確保」(55%)、「サプライヤーの操業回復」(52%)が上位を占めた。前回結果と同様、封鎖管理期間中の生産遅れの挽回方法としては、(自社上海工場の)操業回復を通じて挽回すると回答する企業がほとんどだった。

中国国内、国際物流とも必要量の半分以下しか手配できていない企業が過半

その他、上海市外に所在する自社工場について、「計画通り生産」と回答した企業が57%にのぼり、半分程度以上の生産とする回答を含めると86%に達した。操業率回復に向けては、「物流の回復」(57%)、「納品先の操業回復」(29%)、「サプライヤーの操業回復」(29%)が課題となっている。

上海市外や上海市内の中国国内物流については、7割以上の企業が必要量の半分以下しか手配できていない。そのうち、「全く手配できない」と回答する企業もそれぞれ1割を超えた。他方、前回の実態把握では、「全く手配できない」とする企業は、上海市外で35%、上海市内は56%だったことから、状況は改善しつつある。

国際物流の手配は、必要量の半分以下しか手配できていないと回答した企業は約6割、うち、全く手配できないと回答した企業は14%にのぼった。

上海の代替として利用している他地域の港(空港)は順に、寧波、広州、天津、青島、大連、深センなど広範囲にわたった。

物流全般では、高速道路の検問が減少し、通行証の申請などがスムーズになったことなど改善はみられるが、物流費の高騰や税関の混乱などを指摘する声もあり、正常化にはまだ一定の時間を要するもようだ。

そのほか、駐在員の臨時帰国・避難を実施済み・予定・検討すると回答した企業は16%で、帯同家族は22%となった。今後の駐在員数への影響については、「変更なし(73%)」が「減らす(6%)」を大きく上回った。なお、勤務体制については、全面在宅勤務(64%)が多かったものの、泊まり込みの対応(44%)を実施する企業もあった。特に、上海市内に工場を持つ企業のうち、泊まり込みの従業員がいる企業は86%に達した。

今後の見通しについては、封鎖前と同様の生産、業務が可能と思われる時期として「6月中」(33%)、「7~8月」(50%)と回答した企業が8割を占めた。2022年の収益への影響については、9割近くがマイナスとの見通しを示しており、税制優遇策や家賃減免などを求める声も多い。中国への投資姿勢への影響については、「変更なし」(45%)が約半数を占めたが、「まだ分からない」と回答した企業も39%にのぼった。

4月15日に公表した第1回実態把握(2022年4月19日記事参照)および5月5日の第2回実態把握(2022年5月6日記事参照)は、それぞれ当該記事のリンクから参照可能。

(注)上海に所在する日系企業などにより構成。会員数は2,331件(うち、法人会員2,216社、個人会員115人、2020年12月末現在)。

(岸本優子)

(中国)

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