ホンダなど自動車5社、米排ガス規制の独自裁量権めぐる訴訟でカリフォルニア州の権利支持

(米国)

ニューヨーク発

2022年06月10日

自動車メーカーのフォード、ホンダ、フォルクスワーゲン、BMW、ボルボは6月7日、米国の自動車の温室効果ガス(GHG)排出基準について、その根拠法である大気浄化法の下でカリフォルニア州(加州)に認められている連邦規制からの適用除外(注1)の取り下げを求めてオハイオ州など17州(注2)が米環境保護庁(EPA)に対して起こした訴訟に関し、連邦政府を支持する立場で介入すると発表した。

加州に付与されている適用除外に関しては、2019年9月に連邦政府に権限の一元化を求めるドナルド・トランプ大統領(当時)の下でいったん取り下げられていたが(2019年11月7日記事参照)、GHG削減を政策の柱とするジョー・バイデン大統領の下、EPAは2022年3月に再認することを発表(2022年3月14日記事参照)。これに対し、17州の司法長官が2022年5月に連名で、加州への適用除外の付与は米国憲法に定められる州の「平等な主権(Equal Sovereignty)」の原則に違反しているとの理由から、再認の見直しを求めてEPAを提訴していた。加州のほか19州が適用除外の継続を求めて訴訟に加わっている。

今回の訴訟に参加した5社は、トランプ政権時に加州の権限が失効した後も、加州との間で自発的に締結した「クリーンカーズ枠組み協定」(2021年10月18日付地域・分析レポート参照)の下で、加州と足並みをそろえるかたちでGHG削減と電動化への移行を進めていた。5社は共同声明の中で、排出量削減を推進するリーダーとしての加州の役割は、自動車業界がこれらの課題に効果的かつ一貫した一連の基準の下で対処するために重要とし、「われわれは裁判所がEPAの再認決定を確認し、加州が人々の健康を保護し、清浄な空気基準を設定することによって気候変動と闘えるようになることを要請する。そうすることで、われわれはゼロエミッション輸送の未来に近づき、世界的な規制の枠組みに前向きな貢献ができるようになる」と主張した。また、フォードのゼネラルカウンセル兼チーフポリシーオフィサーであるスティーブン・クロリー氏は「(訴訟への参加は)人々にとっても地球にとっても正しいことであり、業界に規制の安定性をもたらすものだ」(デトロイトニュース6月7日)と述べた。

(注1)大気浄化法(CAA)209条では、加州に対し、一定条件の下で連邦規制の適用除外を認めている。

(注2)オハイオ、アラバマ、アーカンソー、ジョージア、インディアナ、カンザス、ケンタッキー、ルイジアナ、ミシシッピ、ミズーリ、モンタナ、ネブラスカ、オクラホマ、サウスカロライナ、テキサス、ユタ、ウェストバージニアの17州。

(大原典子)

(米国)

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