米環境保護庁、カリフォルニア州独自の自動車環境規制を再認

(米国)

サンフランシスコ発

2022年03月14日

米国環境保護庁(EPA)は3月9日、カリフォルニア州に対し、自動車から排出される温室効果ガス(GHG)と無排出車(ゼロエミッション車:ZEV)の販売に関して、連邦規制の適用除外を認めると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。同州への適用除外は、大気浄化法(注1)に基づいて2009年から認めていたが、2019年9月に当時のトランプ政権が発表した連邦による統一規制「One National Rule」プログラムの下で撤廃された。これに対し、ジョー・バイデン大統領は就任直後に関係省庁へ見直しを指示していた(2021年1月22日記事参照)。今回の発表の中でマイケル・リーガンEPA長官は再認の理由 として、2019年にカリフォルニア州に対する適用免除の取り消しは不適切であり、大気浄化法209項の不正確な解釈に基づく決定であったことなどを挙げている。またEPAは、カリフォルニア州の適用免除を再認しただけでなく、他州がカリフォルニア州基準のGHGZEV規制を適用することも再認した。これにより、準拠州16州(注2)と首都ワシントンで販売される車両に関しても、カリフォルニア州が制定するGHG・ZEV規制が適用されることになる(2021年6月29日付地域・分析レポート参照)。

カリフォルニア州では、ギャビン・ニューサム知事(民主党)が2020年9月、2035年までに州内で販売される新車を全てZEVにすることを義務付ける知事令を発令(2020年10月2日記事参照)。同州では現在、州規制の見直しを行っており、12月に発表された草案の中で知事令達成のためのタイムテーブルとして、2030年までに新車販売のZEV比率を61%以上に設定することを盛り込んだ。これは、連邦政府が目指す50%を大きく上回る目標だ。現時点で、カリフォルニア州と同州規制の準拠州で販売されているZEVの合計台数は、全米の3割以上を占めていることから、電動化を含めた各メーカーの事業戦略に大きな影響を与えるとみられる。

ニューサム知事は2022~2023年州予算案の中で、ZEV化の促進に前年度(39億ドル)の1.5倍以上となる61億ドルを投じることを提案している。その内訳の一部として、低所得層向けのZEV購入支援、安価な充電設備の拡充などにそれぞれ2億5,600万ドルと9億ドル、スクールバスのZEV化などに15億ドルを割り当てる予定だ。

(注1)1970年制定 のGHG排出基準の根拠法。州や自治体が独自に自動車の排出ガス規制を制定することを禁じているが、同法 209項にて、州の規制が連邦基準より厳しく、かつ、必要不可欠で特別な事情がある場合、連邦基準の適用免除を認めている。全米でこの適用免除を受けているのはカリフォルニア州のみ。

(注2)カリフォルニアGHG排出規制の準拠州は、ニューヨーク、マサチューセッツ、バーモント、メーン、ペンシルベニア、コネチカット、ロードアイランド、ワシントン、オレゴン、ニュージャージー、メリーランド、デラウェア、コロラド、ミネソタ、ネバダ、バージニアの16州、うちZEV規制準拠州はペンシルベニア、ワシントン、デラウェアを除く13州。

(田中三保子、大原典子)

(米国)

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