米USTR代表、セレクトUSA投資サミットで通商政策の現状を総括

(米国)

ニューヨーク発

2022年06月29日

米国通商代表部(USTR)のキャサリン・タイ代表は6月28日、米国の首都ワシントンD.C.で開催中のセレクトUSA投資サミットに登壇し、バイデン政権の通商政策の現状を総括外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

タイ代表は冒頭、バイデン政権の通商政策は、ジョー・バイデン大統領が目指しているボトムアップで経済を活性化させ、中間層を豊かにするという経済政策を実現する上で鍵となるパーツだと強調した。また、1つの実例として、発効から10周年を迎えた米国・韓国自由貿易協定(KORUS、注)に言及し、それにより強化された2国間関係が2021年に、SKシルトロンによるミシガン州への拡張投資外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを呼び込んだと評価した。

タイ代表は続けて、新型コロナウイルスの流行やロシアによるウクライナへの侵攻などの影響で、世界が深刻な脆弱(ぜいじゃく)性に直面しており、今こそ貿易と投資を管理するルールを更新する必要があると指摘した。その上で、米国が取り組んでいる事例として、「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」や「21世紀の貿易に関する米国・台湾貿易イニシアチブ」(2022年6月28日記事参照)、6月12~17日に開催された第12回WTO閣僚会合(MC12)での合意事項(2022年6月20日記事参照)などを紹介した。いずれも、これまでの成果を振り返る内容だったが、IPEFについては6月11日に開催した非公式閣僚会合(2022年6月14日記事参照)に触れ、貿易の柱として扱う次の5分野について狙いを説明した。

  • 貿易円滑化:WTOの貿易円滑化協定(TFA)の迅速な実施を追求する。
  • デジタル経済:差別的慣行を是正するとともに、消費者の信頼促進、情報への自由なアクセス、強靭(きょうじん)かつ安全なデジタルインフラの開発、信頼に基づく越境データフローについて新たなルールを追求する。
  • 労働:国際的に認められた労働者の権利を行使するために高水準の労働規定を盛り込み、企業の説明責任を促進し、デジタル経済における新たな労働問題で協力する。
  • 環境:環境の持続可能性の向上に貢献し、共通の気候関連課題に対処できるようなコミットメントおよびルールを追求する。
  • 透明性と良い規制慣行:利害関係者が内容を検証し意見を呈することができるよう、規制措置に関する情報への公共アクセスを確保する。

タイ代表はこのほか、EUおよび英国との航空機補助金紛争を解決したことや(2021年6月16日記事2021年6月18日記事参照)、EUと立ち上げた米EU貿易技術評議会(TTC)において通商協力にかかる議論が進展していることを紹介した(2022年5月17日記事参照)。

(注)2012年3月に発効した2国間自由貿易協定(FTA)。トランプ前政権下で自動車分野を中心にFTAの改定交渉が行われ、2019年1月に改定版KORUSが発効している。ジェトロの「世界のFTAデータベース」を参照。

(磯部真一)

(米国)

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