バイデン米政権、ロシア政府高官らを追加制裁指定、輸出管理も強化

(米国、ロシア、ベラルーシ、ウクライナ)

ニューヨーク発

2022年06月03日

米国のバイデン政権は6月2日、ウクライナ侵攻中のロシアに対して新たな制裁を発表した。財務省、国務省および商務省が、それぞれの権限で制裁を発動している。

財務省は、ロシア大統領府と関係のあるヨット・ブローカー、ロシア政府高官、ウラジーミル・プーチン大統領の資産を管理しているとされるセルゲイ・ロルドゥギン氏や、制裁対象となったロシアの富豪が所有・管理するヨット・航空機を「特別指定国民(SDN)」に指定外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。制裁対象となった政府高官には、ドミトリー・グリゴレンコ副首相兼内閣官房長官をはじめ運輸相、経済発展相ら閣僚メンバーが含まれている。また、国務省は、ロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官を含む政府高官・富豪ら5人とその親族および関連事業体をSDNに指定外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。そのほか、商務省はロシアとベラルーシに所在する71の事業体を輸出管理規則(EAR)上のエンティティー・リスト(EL)に追加している。正式には6月6日付官報で公示外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますする。

SDNには、在米資産の凍結および米国人(注1)との資金・物品・サービスの取引禁止の制裁が科される。また、SDNが直接または間接的に50%以上所有する事業体も当該制裁の対象となる(注2)。今回SDNに指定された対象の詳細は、財務省ページ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを参照。ロシアとベラルーシ向けの輸出管理については、既に4月8日付で、規制品目リスト(CCL)に掲載のデュアルユース品目を両国に輸出・再輸出・国内移送(輸出等)することが実質的に禁止されている(2022年4月12日記事参照)。ELに掲載された場合は、CCLに掲載のない民生品(注3)についても、輸出等が規制されることになる。

なお、商務省は5月20日、EARに違反したとして、ロシアの航空大手であるロシア航空(Rossiya Airlines)の輸出特権を180日間停止する暫定拒否命令(TDO)を発令外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますしている。ロシアの航空関連企業に対するTDOの発令は、4月7日付のアエロフロート、アズールエア、UTエア(2022年4月8日記事参照)、4月21日付のアビアスタル(2022年4月25日記事参照)に続き5社目となる。TDOの対象事業体は、EARに従属する取引に参加できなくなる。商務省はEARに違反してロシアに入国した航空機をリスト化し、随時更新している。これらの航空機に対して、商務省の許可なくサービスを提供した場合、所在地にかかわらず、EAR違反のリスクを負い、禁錮や罰金などの法執行の対象になり得る。最新のリストは商務省産業安全保障局のページ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで確認できる。

なお、2022年2月以降に米国が発動した対ロシア・ベラルーシ関連の制裁については添付資料を参照のこと。

(注1)米国市民、米国永住者、米国の法律に基づく、もしくは司法権が及ぶ域内に存在する法人(外国支所も含む)、もしくは米国内に存在するあらゆる個人を指す。

(注2)ウクライナ情勢に関する財務省の制裁の全容は、同省の「ロシア有害対外活動制裁」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますおよび「ウクライナ/ロシア関連制裁」のポータルサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを参照。制裁対象に指定された個人・企業などについては、同省外国資産管理局(OFAC)のデータベース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでCountry欄のRussiaを選択し、Searchをクリックすることで確認可能。

(注3)EARにおいて、それら品目は「EAR99」と分類される。米国の輸出管理法令の概要・運用などについては、ジェトロ調査レポート「厳格化する米国の輸出管理法令」「続・厳格化する米国の輸出管理法令 留意点と対策」を参照。

(磯部真一)

(米国、ロシア、ベラルーシ、ウクライナ)

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