米商務省次官補が対ロシア制裁を解説、ジェトロがウェビナー

(米国、日本、ロシア、ウクライナ、ベラルーシ)

米州課

2022年05月02日

ジェトロは4月25日、在ロシア日系企業の最新動向と、貿易管理分野の日本と米国の制裁措置に関するウェビナーを開催した。第2部では、米国の対ロシア・ベラルーシ制裁措置の詳細について、米国商務省次官補のテア・ケンドラー氏が講演を行った。なお、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が在ロシア日系企業のビジネスへもたらす影響をテーマとした第1部については、2022年4月27日記事を参照

ケンドラー次官補は、ロシアによるウクライナ侵攻を受けて米国政府が「ロシアの軍事力を低下させる」という目標を設定した上で、その実現のために、(1)どのような品目がロシアの軍事力を支援するものとなっているか、(2)どのような団体や個人がロシアの軍事力を支えているか、(3)(米国のロシアとの)貿易の規模が(他国と比べて)相対的に小さい中で、制裁によるインパクトをどのように最大化するか、という3つの問いを設定したことを明らかにしている。

品目については、既に国際輸出管理レジームで管理されているものに加え、米商務省産業安全保障局(BIS)が管理する規制品目リスト(CCL)に掲載された米国製品について、ロシアに輸出・再輸出・国内移送をする場合には、BISの事前許可を求めていることを挙げた(2022年2月25日記事4月12日記事参照)。

ロシアの軍事力を支える団体や個人については、「米国の国家安全保障または外交政策上の利益に反する行為に携わっている、またはその恐れがある」ものとして、輸出管理規則(EAR)上のエンティティー・リスト(EL)に掲載の上、それらに対して米国製品(物品、ソフトウエア、技術)を輸出・再輸出・みなし輸出などを行う場合には、事前許可が必要となる点を挙げた(2022年4月28日記事参照)。

制裁によるインパクトを最大化する方法としては、米国製のソフトウエア・技術を用いて米国外で生産された製品をロシア向けに輸出する際に、事前の許可申請を求めるという外国生産直接製品(FDP)ルールの適用や、奢侈(しゃし)品の輸出禁止を挙げた(2022年3月14日記事参照)。ただし、日本をはじめ、米国と同様のロシア向け輸出管理を導入する国については、このFDPルールの対象外である点も強調した。

質疑応答では、輸出者が輸出管理規則に違反した際に適用される罰則や、米国の規制を守らない国々へのアプローチ方法、第三国企業による規則違反の特定方法などに関する質問が寄せられた。規則の運用について、ケンドラー氏は、各国との協調体制の構築を重要視するとともに、「われわれは企業に対して、規則を破ってほしいと思っているわけではない」とするとともに、(競合他社などが)輸出規則違反を行っているかどうかについては、業界を理解している企業側の方がよく分かっているとし、企業との緊密な連携と望んでいることを強調した。

写真 ケンドラー氏の講演の様子(左から若松勇ジェトロ海外調査部長、風木淳経済産業省貿易経済協力局貿易管理部長、テア・ケンドラー米国商務省次官補、レニー・ソンダーマン米国国務省通常兵器脅威削減部長)

ケンドラー氏の講演の様子(左から若松勇ジェトロ海外調査部長、風木淳経済産業省貿易経済協力局貿易管理部長、テア・ケンドラー米国商務省次官補、レニー・ソンダーマン米国国務省通常兵器脅威削減部長)

(滝本慎一郎)

(米国、日本、ロシア、ウクライナ、ベラルーシ)

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