米NY市マンハッタンの4月賃料3,870ドル、3カ月連続で過去最高を更新、政権は住宅支援を急ぐ

(米国)

ニューヨーク発

2022年05月20日

米国住宅仲介会社のダグラス・エリマンとミラー・サミュエルが5月12日に発表したレポートPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)によると、ニューヨーク(NY)市マンハッタン地域の4月の賃料の中央値は3,870ドルとなり、3カ月連続で過去最高を更新したことが明らかになった。2020年からの不動産価格の上昇が賃料に波及している実態がより鮮明となっている(2022年5月9日付地域・分析レポート参照)。

調査対象はマンハッタン地域の賃貸アパートやコンドミニアムなどで、前月比で6.2%上昇、前年同月比では38.7%上昇した。アパートなどの全体の空室率は4月が1.55%で、2010年以降でみて最低水準にある。前年同月は約12%、パンデミック前でも2%強で推移していたことからすると、需給がかなり逼迫している。

民間調査によると、NY市内の企業で勤務する社員の平均出社率は4割程度とオフィス復帰は進んではいないが(2022年5月13日記事参照)、空室率の歴史的な低水準を考えると、市内に人は戻ってきているようだ。加えて、パンデミック以降の不動産価格の上昇が家賃に波及していることが家賃上昇の背景にある。2021年の住宅価格は18.8%増と過去最高を記録しており、ここにきてこの価格上昇が家賃など住居費にも如実に反映されている。4月の消費者物価における住居費の前年同月比の伸びは5.1%と、2021年4月の2.1%からほぼ一貫して上昇してきている(2022年5月12日記事参照)。米国連邦準備制度理事会(FRB)の金融引き締め姿勢への転換により、年初3%前半だった住宅ローン金利(30年固定)は5%半ばまで上昇、1~3月期の住宅ローン組成額も減少し、住宅価格には下落圧力がかかるが、住居費への反映には時間がかかり、家賃高止まりもしばらく続きそうだ。

こうした現状から、バイデン政権は5月16日、住宅費負担軽減のための行動計画を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。米国での住宅不足は150万戸と推計されており、低中所得者層への賃貸などのための50万戸の住宅開発や、購入を目的とした12万5,000戸の住宅建設などを盛り込み、供給不足を補い、住宅負担軽減を図る。しかし、これらの裏付けとなる予算は、暗礁に乗り上げているビルド・バック・ベター法案や、3月末に発表された2023年度予算(2022年3月29日記事参照)で手当てされるとしており、政策の実現可能性や実行時期は不透明だ。住居費は家計の3割程度を占めるとされ、住居費上昇は特に低中所得者層への負担が相対的に重くなりやすい。2022年11月に中間選挙が迫る中、効果的に住居費の負担軽減を図り、有権者にアピールできるかが注目される。

(宮野慶太)

(米国)

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