バイデン米政権、2023年度予算教書を発表、前年度比1%減の歳出総額5.8兆ドル

(米国)

ニューヨーク発

2022年03月29日

米国行政管理予算局(OMB)は3月28日、2023会計年度(2022年10月~2023年9月)予算教書を議会に提出PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した。遅れていた2022年度予算が先日ようやく成立したところだが(2022年3月14日記事参照)、連邦政府・議会は次年度の予算作成・審議に取り組むこととなる。

2023年度予算案では、歳出は5兆7,920億ドルで前年度比1%減となった。コロナ対策で歳出が膨張した2021年度や2022年度からは減少しているが、それでもコロナ前の2019年度予算の約4兆5,000ドル規模に比べると高水準が続いている。歳出は、国防費など議会の可決が必要な裁量的経費と、社会保障などの義務的経費に分かれており、裁量的経費は前年度比0.9%増の1兆7,090億ドルで、特に国防費は裁量的経費以外にも含まれている分を含めると総額で8,133億ドルを要求している。ジョー・バイデン大統領は「歴史上、安全保障に対する最大の投資の1つになる」と述べて、ロシアによるウクライナ侵攻などにより緊迫化する世界情勢に備えるとした。また、義務的経費は3.0%減の3兆6,870億ドルとなっている一方、利払い費は連邦準備制度理事会による今後の政策金利利上げが予定されていることから(2022年3月17日記事参照)、10.9%増の3,960億ドルとなっている(添付資料表参照)。

歳入については、前年度比4.5%増の4兆6,380億ドルとなった。1億ドル超の資産を保有する上位0.01%の富裕層に対し、キャピタルゲインも含めて最低20%の所得税率を設けるとしているほか、連邦法人税率を現行の21%から28%への引き上げるなどの増税措置を盛り込んだことが歳入増に寄与している。その結果、財政赤字は前年度比18.4%減の1兆1,540億ドルとなっており、バイデン政権ではこれらの増税措置を通じ、今後10年で財政赤字を1兆ドル削減できると試算している。

今回の予算は、実質成長率が2022年度4.2%、2023年度2.8%、消費者物価指数(CPI)の伸びは2022年度4.7%、2023年度2.3%を想定して作成されているが、この見通しは2021年11月時点のもので、緊迫化するウクライナ情勢を背景としたエネルギー・資源高による物価や経済成長への影響が盛り込まれていない。ホワイトハウスは2022年内に経済見通しを修正予定とするが(ロイター3月28日)、経済前提が変われば予算の数値への影響も必至だ。加えて、米国では予算編成・決定権は議会にあり、今回の予算案は議会審議のたたき台となるが、今回の予算案には、野党の共和党が敬遠する増税や、暗礁に乗り上げているビルド・バック・ベター法案に含まれる気候変動対策なども盛り込まれていることから、議会審議の難航が予想される。ウクライナ情勢が長期化し、中間選挙も11月に迫る中、2023年度予算を速やかにまとめ、現状に効果的な政策を打ち出していけるか、バイデン政権と議会の今後の動向に注目が集まる。

(宮野慶太)

(米国)

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