カスピ海横断輸送路の重要性を指摘、ダボス会議で関係国

(アゼルバイジャン、カザフスタン)

欧州ロシアCIS課

2022年05月26日

5月22日から26日までスイスのダボスで開催された世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で、ロシアのウクライナ侵攻による地政学的環境の変化を受けた中央アジアやコーカサス地域への影響や課題が議論された。アゼルバイジャン、カザフスタンからの参加者はともに、同地域と欧州、中国を結ぶ輸送ルート開発の重要性を挙げた。

23日に行われたセッション「戦略的見通し:ユーラシア」の中で、アゼルバイジャンのミカイル・ジャバロフ経済相はコネクティビティー(注1)の変化に応じた地域協力の重要性が増していると指摘、中国と欧州を結ぶ輸送ルートとして中部輸送路(注2)は過去10年にわたり近隣国と協力して開発してきた実績をアピールした(2018年5月14日付地域・分析レポート参照)。中部輸送路は中国、カザフスタン、アゼルバイジャン、ジョージア、トルコから欧州につながるルートで、ロシアを通らない。

ジャバロフ氏は、5月18日にEUが公表したロシア産化石燃料依存からの脱却に関する計画(2022年5月20日記事参照)の中で、アゼルバイジャンと欧州を結ぶ南部天然ガス輸送路(注3)の供給能力拡大支援が言及されたことに触れ、これに応じる用意があるとし、「今後、欧州側と議論するが、投資に当たってのリスク分担の議論が重要」と述べた。

カザフスタンの元副首相で、アスタナ国際金融センターのカイラト・ケリムベコフ総裁は、変化する地政学的情勢からの教訓として多様化を挙げ、「1つの国、1つのソース、1つの産業に依存すべきでない」と述べた。ケリムベコフ氏によると、カザフスタンはカシムジョマルト・トカエフ大統領主導の経済改革を通じて、輸出先や投資受け入れ国の多様化に取り組んでいる。現在、カザフスタンの輸出の8割がロシア経由だが、輸出機会の拡大のため中部輸送路の活用を挙げ、カザフスタンが面するカスピ海東岸からの輸送能力を強化する必要があると指摘した(2019年11月26日記事参照)。また、中国を経由した東アジアや、ウズベキスタン、アフガニスタン、パキスタンを通じた南アジアへのアクセス拡大も検討していると述べた。

(注1)地域間の地政学的・経済的な接続性や連結性を指す。

(注2)カスピ海横断国際輸送路(TCICR)とも呼ばれる。

(注3)南コーカサス・パイプライン(SCPX)、トランスアナトリア・パイプライン(TANAP)、トランスアドリア・パイプライン(TAP)の3つから構成される(2019年12月16日記事参照)。

(浅元薫哉)

(アゼルバイジャン、カザフスタン)

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