米USTR、EUの新興技術規制や英国の音楽著作権不順守に懸念表明、2022年外国貿易障壁報告書(EU・英国編)

(米国、EU、英国)

米州課

2022年04月13日

米国通商代表部(USTR)は3月31日に公表した2022年度「外国貿易障壁報告書(NTE)」(2022年4月4日記事参照)において、EUに48ページ、英国に11ページを充てた。

EUの関税障壁について、非農産物に対する関税率は一般的に低いが、魚介類(26%)、トラック(22%)、自転車(14%)、乗用車(10%)、木材加工製品(6.5%)、肥料およびプラスチック(6.5%)などに対する関税率が高く設定されている、と指摘。EUは、2018年6月にEU原産の鉄鋼・アルミニウムに対する米国の追加関税賦課に報復措置を発動(2018年6月21日記事参照)し、農産物や工業製品、原材料などに10~25%の関税を課したが、米国とEUは2021年10月に共通課題の解決に向けた協力強化を発表し、対米追加関税の撤廃を含むいくつかの措置がすでに講じられたと記述した(2021年11月2日記事参照)。

また、EUの非関税障壁について、米国の輸出業者はEUにおける貿易上の技術的障壁(TBT)の急増に直面しており、EUの規制プロセスは明確性と有効性に欠け、米国政府はこの点に関して2国間協議やWTOのTBT委員会で懸念を表明してきたと主張。米国は新興技術に係る規制強化を模索するEUの動きを注視していると述べ、その例として、人工知能(AI)規制枠組み規則案(2021年4月23日記事参照)や2019年発効のサイバーセキュリティ法に基づく基準の策定を挙げた。他にも、政府調達、知的財産権の保護、サービス障壁、デジタル貿易および電子商取引上の障壁、投資障壁、その他の障壁の各項目に分けて、それぞれの問題点を指摘している。

英国に関して、関税障壁の項目では、米国がEU離脱後の英国と関税割当(TRQ)について交渉した結果、米国の輸出業者は豚肉や牛肉などの品目について英国市場にアクセスしやすくなったと評価した。他方、非関税障壁について、英国の国境管理は新たに開始されて間もなく運用方法が不透明と懸念を示し、英国政府機関のITシステムは依然開発中で、複数地点の国境管理インフラも構築中であるため、米国製品の輸出入に時間を要する可能性がある、と記述した。政府調達分野では、英国宇宙庁が年間予算の約75%を割り当てる欧州宇宙機関(ESA)での調達案件について、参加条件がESA加盟国に限定されているため、米国企業による応札は一般的に禁止されていると述べ、ESAの問題点を指摘した。知的財産権の保護に関しては、同国の保護および執行レベルは一般に高水準な一方、音楽著作権管理団体が英国内の音楽放送および公的な場での演奏について米国のアーティストに報酬を支払っていないとの懸念を示した。

(片岡一生)

(米国、EU、英国)

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