米USTR、デジタル貿易や労働分野の障壁を指摘、2022年外国貿易障壁報告書

(米国)

ニューヨーク発

2022年04月04日

米国通商代表部(USTR)は3月31日、米国の貿易・投資・サービスに対する障壁を国・地域別に示した2022年版「外国貿易障壁報告書(NTE)」を公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

2022年版のNTEは64カ国・地域を対象に、米国にとっての貿易障壁を報告している。内訳をみると、EU(48ページ)、中国(39ページ)、インド(22ページ)、ロシア(21ページ)の順に記述が多く、並びは前年と変わりはない(2021年4月2日記事参照)。日本には前年と同じ18ページを割いた。

報告対象分野は14あり、前年の11分野に国有企業、労働、環境の3分野が加わった。USTRはプレスリリースで、(1)農業貿易、(2)デジタル貿易、(3)産業政策、(4)労働、(5)貿易の技術的障壁の5分野の障壁について、それぞれの内容を例示している。(1)では、中国やインドネシアの不透明で煩雑な施設登録要件や、トルコやメキシコ、EUの科学的証拠に基づかない、または過剰な衛生植物検疫(SPS)措置などを挙げた。(2)では、インドのデータローカライゼーションや越境データ移転に関わる規制や、EUが政策目的として促進する「技術主権」または「デジタル主権」を指摘した。

(3)では、中国の国家主導による非市場的な経済・貿易慣行を挙げ、同国の産業政策が鉄鋼・アルミニウムや太陽光発電製品の過剰生産を招いていると批判した。(4)では、中国新疆ウイグル自治区での強制労働や人権侵害のほか、バングラデシュやタイの結社の自由の制限に懸念を示した。(5)では、メキシコのチーズ向け適合性評価手続きの草案や、フィリピンや台湾などが米国の連邦自動車安全基準(FMVSS)に適合する自動車を排除するような安全基準を導入していることを問題視した。

一方、USTRは障壁の撤廃に関わる成果として、日本政府と日米貿易協定に基づく対米牛肉セーフガード適用条件の見直しで実質合意したこと(2022年3月25日記事参照)や、ベトナムとの違法木材に関する合意(2021年10月4日記事参照)を取り上げた。

(甲斐野裕之)

(米国)

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