華東地域の物流は一部改善ながら、現場レベルでは通行制限が続く

(中国)

上海発

2022年04月20日

中国・上海市の新型コロナウイルス対策に伴う都市封鎖は3区分管理へ移行し、操業再開に向けた動きも出始めている(2022年4月14日記事2022年4月18日記事参照)。一方、上海に進出する日系企業で組織される上海日本商工クラブが4月9~12日に実施したアンケートでは、中国国内の物流のうち上海市以外の地域との物流が停止しており、特に、省をまたぐ場合はPCR検査や隔離が求められ、ドライバーの確保が困難との意見が相次いだ(2022年4月19日記事参照)。

国務院は4月11日、物流を保障するよう地方政府・政府機関に通知を発表している(2022年4月11日記事参照)。しかし、交通運輸部の責任者は、現場では一部の防疫検問所が統一的ではない措置を実施、さらには過重な措置を実施していることを指摘する。具体的には、一部地域で、単にトラックの本籍地(注)を通行制限の根拠として、トラックの本籍地が中高リスク地域である場合、トラック運転手は一律に追い返されているとしている。上海の物流会社の責任者によると、4月12日に上海市から江蘇省常熟市まで貨物を輸送した運転手は、PCR検査、抗原検査の陰性証明を所持し、健康コードと行程コードが緑色だったにもかかわらず、トラックを下りてトイレに行き、商品を購入したために、常熟市で強制的に隔離。隔離期間も分からない状況下で、さらに隔離費用として毎日450元(約9,000円、1元=約20円)支払う必要があり、運転手の大きな負担となっているとした(「新華網」4月17日)。このように、防疫対策の最前線では、防疫対策が物流よりも優先されるケースがみられる。

上海市の呉清常務副市長は4月19日の記者会見で、長江デルタの川上・川下の各産業サプライチェーンにおける生産再開を、華東地域の1市3省(上海市、江蘇省、浙江省、安徽省)共同で進める考えを示した。既にコア部品、コア原材料の輸送については、1市3省で連携した行動をとっているとしている。具体的な取り組みとして、呉副市長は、江蘇省泰州市が同市に所在する上海汽車集団、テスラのサプライヤーの生産再開と運送通行証の手続きを支援したほか、江蘇省蘇州市、泰州市などは華虹半導体、中芯国際集成電路製造(SMIC)など集積回路メーカーの車両が当該地域に出入りして原料を運び出すに当たり、通行上の便宜を図っていることを紹介した。

(注)中国では、車両のナンバープレートに、車両が登録された各省市自治区の略称が記載されている。

(高橋大輔)

(中国)

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