IMF経済見通し、アジア新興国地域は中国経済の減速により左右、ウクライナ危機の影響は間接的

(ASEAN、中国、インド、マレーシア、インドネシア、フィリピン、タイ、ベトナム)

アジア大洋州課

2022年04月21日

IMFは4月19日発表の「世界経済見通し(2022年4月)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」で、アジアの新興・途上国地域の2022年の実質GDP成長率を前年比5.4%とする予測を発表した。前回2022年1月の発表より0.5ポイント引き下げた(添付資料表参照)。ロシアのウクライナ侵攻に伴う混乱を主要因として、世界全体の成長率も前回発表から0.8ポイント減と大きく引き下げられるなか、アジアも同様に引き下げとなった(2021年4月21日記事参照)。また、2023年についても5.6%と、前回発表から0.2ポイント引き下げになった。

アジアは中国経済の減速が下振れ要因

IMFは、特にアジアの新興国・地域については、(同地域で大きな経済規模を誇る)中国経済の動向に左右されると指摘。中国の不動産分野における引き締め政策が継続し、いわゆる「ゼロコロナ政策」により、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い各都市でのロックダウンが広がることで、同国の経済が予想以上に減速し、新興・途上国市場の経済回復がさらに遅れる可能性を指摘した。ウクライナ問題の影響については、アジア地域は、ロシアやウクライナとの直接貿易は限られるため、一次産品価格の高騰や、欧州圏など主要貿易相手国の需要減退など、間接的な影響となるとした。

なお、アジアの新興・途上国・地域における経済見通しについては、アジア開発銀行(ADB)と世界銀行が4月にアジアの新興国・地域の2022年の見通しを発表しているが、いずれも前回予測より引き下げている(ADB:2022年4月12日記事参照、世界銀行:2022年4月18日記事参照)。なお、両機関とも同地域のリスクや下振れ要因として、ウクライナ問題の影響や、中国のゼロコロナ政策の影響を指摘している。

ASEAN主要国ではフィリピン、ベトナムが高成長の予測

ASEAN5カ国(注)の2022年の成長率予測は5.3%で、前回予想から0.3ポイント引き下げた。2023年については、前回発表から0.1ポイント引き下げ5.9%と予測した。同5カ国の2022年の見通しを国別でみると、高い順に、フィリピンが6.5%(前回発表から0.2ポイント増)、ベトナムが6.0%(前回は発表なし)、マレーシアが5.6%(同0.1ポイント減)、インドネシアが5.4%(0.2ポイント減)、タイが3.3%(0.8ポイント減)となった。

2021年2月に発生した国軍による権力掌握で混乱が続くミャンマーについては2021年のマイナス17.9%に対し、2022年は1.6%、2023年は3.0%と予測した。

なお、ASEANの見通しについては、ADB、世界銀行の4月発表の予測では、いずれもフィリピンとベトナムは高成長と予測している。

(注)ASEAN5カ国はインドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナム。

(三木貴博)

(ASEAN、中国、インド、マレーシア、インドネシア、フィリピン、タイ、ベトナム)

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