ADB、アジア新興地域の成長率予測を発表、ロシアのウクライナ侵攻や中国のゼロコロナ政策のリスクを示唆

(ASEAN、ベトナム、タイ、シンガポール、インドネシア、マレーシア、ミャンマー、中国、インド)

アジア大洋州課

2022年04月12日

アジア開発銀行(ADB)は4月6日、「2022年アジア経済見通し(ADO)」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますにおいて、アジアの新興国・地域(注)の2022年の実質GDP成長率を前年比5.2%、2023年は5.3%とする予測を発表した。新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて、マイナス成長(マイナス0.8%)となった2020年を底に回復基調が続いているが、前年(2021年)の6.9%からは減速する見通し。しかし、ワクチンの接種が進んだことで、各国での入国規制などの緩和や、同地域の堅調な輸出と力強い内需の回復に支えられ、「新型コロナ禍」前の2019年(5.0%)を超える水準で推移すると予測した(添付資料表1参照)。

下振れリスクは、ウクライナ問題に起因するインフレや中国のゼロコロナ政策の影響

ただし、2022年の予測は前回の2021年12月発表時(2021年12月17日記事参照)より0.1ポイント引き下げられた。ADBは同地域の見通しについて、いくつかの下振れリスクが存在すると指摘。具体的には、1.ロシアのウクライナ侵攻に起因する地政学的緊張の高まりが、各国の貿易と生産を妨げ、インフレ圧力を高める可能性がある点、2.米国の積極的な金融引き締めが、金融不安や通貨安につながる可能性がある点、3.いわゆる「ゼロコロナ政策」をとる中国におけるオミクロン株の感染拡大が、経済成長とサプライチェーンに負の影響を与える可能性がある点、などを指摘した。

特に、インフレ率については、景気回復が続き、エネルギーや商品価格が高騰していることから、2021年の前年比2.5%から、2022年は3.7%に上昇すると予測。他方、2023年は3.1%にとどまる見込み(添付資料表2参照)。

インドが成長を牽引、東南アジアではベトナムとフィリピンで高成長との予測

経済成長率を国・地域別にみると、特に南アジアでは、インド(2022年:7.5%、2023年:8.0%)を中心に、内需の回復に起因する高成長が続くとの予測。また、東南アジアでは、地域全体で2022年に4.9%、2023年は5.2%と予測。国別では、ベトナムが、2021年第4四半期からのウィズコロナへのシフトや高いワクチン接種率を背景にそれぞれ6.5%、6.7%と最も高い成長予測となった。フィリピンも、国内投資と消費が景気回復の牽引役となるとし、6.0%、6.3%の高成長を予測している。なお、クーデーター後の混乱が続くミャンマーは、マイナス0.3%、2.6%と、2020年のマイナス18.4%からは改善するも、低調な予測になった。

(注)アジア大洋州地域のうち、以下の46カ国・地域。

  • 東アジア:香港、モンゴル、中国、韓国、台湾
  • 東南アジア:ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、東ティモール、ベトナム
  • 南アジア:アフガニスタン、バングラデシュ、ブータン、インド、モルディブ、ネパール、パキスタン、スリランカ
  • 中央アジア:アルメニア、アゼルバイジャン、ジョージア、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン
  • 大洋州:クック諸島、ミクロネシア、フィジー、キリバス、マーシャル諸島、ナウル、ニウエ、パラオ、パプアニューギニア、サモア、ソロモン諸島、トンガ、ツバル、バヌアツ

(三木貴博)

(ASEAN、ベトナム、タイ、シンガポール、インドネシア、マレーシア、ミャンマー、中国、インド)

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