ドイツの天然ガス、供給国の多様化や来冬までの貯蔵量の確保が必要

(ドイツ、ロシア、ウクライナ)

デュッセルドルフ発

2022年03月22日

ドイツのケルン経済研究所(IW)の付属機関iwdは3月10日、ドイツのエネルギー消費の現状やロシア産天然ガスへの依存に関する分析記事を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

2021年のドイツの1次エネルギー消費量構成のうち、石油は31.8%、天然ガスは26.7%、石炭は8.6%と化石燃料で6割を超えた(添付資料表参照)。これらは、ロシアへの依存度が高い。記事によると、ドイツは2020年に、石油34%、天然ガス55%、石炭45%がロシアからの輸入だった。特に、天然ガスは国内需要の9割以上を輸入に頼り、加えて輸入の半分以上をロシアに依存していることになる。

ロシアのウクライナ軍事侵攻を背景に、ロシアが天然ガスの輸出を停止、またはEUがロシアからの天然ガスの輸入を禁止した場合、ドイツは短期間であれば供給不足に耐えることは可能だが、その期間は主に(1)冬を迎える前のガス貯蔵量、(2)ロシア以外の国からの液化天然ガス(LNG)の輸入可否、(3)冬の気温、の3つの要素に左右されるという。

1つ目の要素は、ガス貯蔵量だ。ドイツの天然ガス貯蔵可能容量は240億立方メートルと、EU全体の貯蔵可能量の25%程度に相当する。多くの人が暖房の使用を開始する10月初旬時点で貯蔵施設での貯蔵率が高い場合、供給不足でも対応可能だ。例年10月時点の貯蔵率は95%以上だが、2021年10月の貯蔵率は3分の2未満だった。これには、ドイツ国内のガス貯蔵施設のうち、ロシア国営ガス会社のガスプロムが直接または合弁で20~25%を保有しており、それらの施設で2021年にほとんど充填(じゅうてん)されなかったことの影響もあった。

2つ目は、ロシア以外の国からのLNGの輸入可否だ。ドイツでは、まだLNGターミナルが存在せず、北部2カ所に建設の予定だ(2022年3月11日記事2022年3月15日記事参照)。EUで最大のLNG輸入能力を有するのはスペインだが、他のEU加盟国への輸送インフラが不足している。また、全世界で取引されるLNGの大半は長期供給契約に基づき取引されており、自由に売買できるLNG量は少ない。加えて、供給国によってはLNGの船舶輸送に最大2週間かかるなどの課題がある。

3つ目は、冬の気温だ。暖冬の場合はガス必要量が少なくなるが、厳冬の場合、ガスの需要は急増する。

iwdは、ロシア産天然ガスへの依存度を下げるためには、(1)ガス供給国の多様化やLNGターミナルなどのインフラ整備、(2)来期の暖房開始時期までの十分な貯蔵量の確保、(3)長期的には再生可能エネルギーの拡大が重要、と結論付けた。

(ベアナデット・マイヤー、作山直樹)

(ドイツ、ロシア、ウクライナ)

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