東南アジア主要国で入国時の隔離なし、出張再開へ弾み

(ASEAN、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール)

アジア大洋州課

2022年04月01日

ジェトロは、アジア大洋州地域の新型コロナウイルスに関する直近の主要な動きをまとめた。4月1日からシンガポール、マレーシアで、原則として、日本を含む全ての国・地域を対象にワクチン接種者を対象とした隔離なしの入国が再開した。インドネシアでは、3月23日から主要な国際空港で隔離なしの入国を開始した。現在、バリ島などで実施している観光用の到着査証の発給についても対象地域を広げた。フィリピンでは、既に2月から日本を含む特定国・地域に対して隔離なしの入国を実施しているが、さらに4月1日からその対象を全ての国・地域に拡大した。これらの国では、今後、ビジネス出張の再開が期待される。ジェトロには、マレーシアなどに出張を予定する日本企業から、入国手続きや行動制限に関する問い合わせが増えているが、いまだ不明点もあるため、出張の準備に当たっては、今後の各国の発表や運用を注視することが必要だ。

各国の主要動向は以下のとおり。

〇シンガポール

新型コロナウイルスの政府タスクフォースは3月24日、国内感染状況の沈静化を受けて4月1日から、全ての国・地域からの渡航者について、ワクチン接種を完了していれば入国時の隔離義務を原則撤廃すると発表した(2022年3月25日記事参照)。これまでワクチン接種者に限り、隔離なし往来を認めてきた「ワクチン・トラベル・レーン」(VTL)を4月1日から廃止し、代わりに、渡航規制リストにある国・地域(4月1日時点で対象国なし)に過去7日間滞在していない全てのワクチン接種完了者について、隔離なしの入国を基本的に認めた。接種したワクチンの種類や回数・時期によって接種完了とみなすかどうかが異なるため、留意が必要(注)。また3月29日から、屋外でのマスク着用を義務でなく任意とするなど、制限を緩和した。公共交通機関や屋内では、引き続きマスク着用が必須だ。

〇マレーシア

マレーシア保健省は3月24日、4月1日からの隔離なしの入国手続きの詳細を発表した(2022年3月29日記事参照)。旅行者は、出国前に政府の新型コロナ対策アプリ「MySejahtera」(マイセジャテラ)をスマートフォンなどにインストールの上、必要事項を入力する。ワクチン接種完了者については、出国前2日以内のPCR検査、入国後24時間以内の抗原検査などで陰性の場合に、入国時の隔離が不要となる。ただし、シノバック製ワクチン接種者や、60歳以上はブースター接種を完了していないと「ワクチン接種未完了」とみなされ、隔離の対象となることから注意が必要だ(2022年3月31日記事参照)。

なお、シンガポールとマレーシアは、両国の陸路往来を4月1日以降、全面的に再開した。出発前と到着時の新型コロナウイルス検査と隔離が不要となり、自家用車での往来も認めた(シンガポール首相府)。

〇インドネシア

ジョコ・ウィドド大統領は3月23日から、インドネシアの全ての地域で、隔離なしの入国を認める方針を発表した(「コンパス」3月23日)。同日付の政府の通達によると、ジャカルタ、スラバヤ、バリなどの国際空港などで、2回以上のワクチン接種を完了した入国者は、入国時のPCR検査で陰性であれば、隔離が不要となった。ただし、入国に当たってはPCR検査の陰性証明書など、所定の手続きが引き続き必要となる(2022年3月29日記事参照)。

入国時の査証については、法務・人権省が3月21日、バリ島で実施している、日本を含む観光客に対する到着査証の発給について、対象国をこれまでの23カ国・地域から、中国などを含む42カ国・地域に拡大した。

なお、国内規制について政府は3月21日、ジャワ島・バリ島における行動制限(PPKM)を4月4日まで延長し、ジャカルタ首都圏はレベル2で据え置いた。他方、一部地域の規制を緩和し、これまで最も厳しい規制(レベル4)だったジョグジャカルタ特別州をレベル3に引き下げた。これにより、レベル4の地域はなくなった(ビスニス3月21日)。

〇フィリピン

政府は3月25日、4月1日から入国制限を一層緩和し、全ての国・地域からの入国者に対して、ワクチン接種完了者を対象に隔離なしの入国を認める外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますことを発表した。引き続き、入国前2日以内のPCR検査による陰性証明書などが必要となるが、入国後に施設での隔離はなく、セルフモニタリングのみとなる。なお、同国は2月10日から、既に日本を含む特定の国・地域に対して、ワクチン接種完了者を対象に隔離なしの入国を再開していた(2022年3月18日記事参照)。

政府は3月15日、マニラ首都圏において「アラート・レベル・システム」のうち、最も制限が緩い「アラート・レベル1」を同月31日まで継続すると発表。また、日系企業の進出が多いバタンガス州も今回新たに「アラート・レベル1」へ制限が緩和した(政府通信社3月15日付)。

なお、各国の感染状況、現地の行動制限、空港の再開状況、経済活動の制限などについては、アジアにおける新型コロナウイルス対応状況でもまとめている。

(注)入国管理局(ICA)のウェブページ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、ファイザー製ワクチンの場合は出発の17日前までに2回の接種を終えている場合、モデルナ製やアストラゼネカ製ワクチンの場合は出発の24日前までに2回の接種を終えている場合に、ワクチン接種完了者となる(4月1日時点)。その他のワクチンについてはICAのページ参照。

(山城武伸)

(ASEAN、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール)

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