バイデン米政権、前政権で簡素化された公共インフラ事業の環境影響評価を再び厳格化

(米国)

ニューヨーク発

2022年04月26日

米国大統領府の環境諮問委員会(CEQ)は4月20日、トランプ前政権下で手続きが簡素化された公共インフラ事業における事前の環境アセスメントにつき、再び厳格化した最終規則外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。インフラ事業の迅速化という観点から、2020年9月に同規則は簡素化されたが(2020年7月21日記事参照)、変更前の規則に戻される。また、最終規則は2022年5月20日に施行される。

今回の最終規則では、環境アセスメントの際に環境への長期的な影響を検討するよう規制当局に求めた、累積的影響の定義が再び加えられた。これにより、インフラ事業を実施する際には環境への直接的・間接的な影響に加え、環境負荷が大気や水質にもたらす長期的な影響についても検討する必要性があり、より幅広い気候変動への影響評価を求められることとなる。また、インフラ事業を実施する各省庁が、委託先の提案よりも環境負荷の少ない代替案を事業実施者や地域コミュニティと協力して検討することや、より厳格な環境アセスメントを独自に作成することも認めている。

今回の変更について、環境保護派からは支持する声が広がっている一方、業界団体の中には批判的なものもある。全米商工会議所は「急速なインフレやサプライチェーン逼迫、労働者不足の中で、わが国が最も不必要なのは、いたずらに広範囲で重複した官僚主義的手続きと(インフラ)プロジェクト承認の遅れだ」と述べている(「ウォールストリート・ジャーナル」紙電子版4月19日)。こうした批判がある中、環境アセスメントを所管するCEQは今回の最終規則発表とともに、今後数カ月以内にレビュープロセスの効率化のための提案を行うことも発表している。

足元のエネルギー価格高騰を受け、バイデン政権は戦略石油備蓄の放出や公有地での石油・ガス開発リース再開を進めるなど(2022年4月1日記事4月21日記事参照)、石油といった化石燃料の供給を一時的に優先しているが、環境保護派からはこれらに対する不満の声が出始めている。アースデーの4月22日には、気候変動対策が盛り込まれているビルド・バック・ベター法案の速やかな可決など、政府の気候変動対策の強化を求める抗議活動のためにホワイトハウス前に多くの人が集まった(「ニューヨーク・タイムズ」紙電子版4月23日)。中間選挙が11月に迫る中、一般家庭へのガソリン高の影響緩和に対する腐心とともに、環境保護派への配慮も必要なバイデン政権の政策運営が続いている。

(宮野慶太)

(米国)

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