米トランプ政権、インフラ事業の環境影響評価の簡素化を発表

(米国)

ニューヨーク発

2020年07月21日

米トランプ政権は7月15日、インフラ事業における環境アセスメント手続きを簡素化する最終規則外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。1970年にニクソン大統領により制定された「国家環境政策法(NEPA)」の規則を改正し、主要なインフラ事業の開始までに要する期間を短縮するのが狙いで、9月14日から施行される。

最終規則の発表に先立ち、NEPAを所管する環境諮問委員会(CEQ)は2020年1月に改正案を出すとともにパブコメを募集していた(2020年1月15日記事参照)。米国では公共事業を実施する際、NEPAに基づき、環境への影響に関わる審査を行い、重大な懸念があれば詳細な調査を行う。CEQの報告によると、2010~2017年に扱われた案件において、調査に平均約4年半要しており、10年を超える案件も多数に上る。今回の改正では、原則、審査を1年以内、調査を2年以内とすることが新たに明記された。

手続き迅速化の方策として、現行規則は調査を原則150ページ未満に収めるルールだったが、今回の改正で審査についても75ページ以内の報告を義務付ける。また、提出が必要な文書の省略や、省庁横断の案件では共通の資料を用いること、参照する科学的証拠は既存研究を推奨することで時間のかかる新規の情報収集を省略する。さらに、手続きの免除範囲について各省庁が対象リスト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを作成しているが、他省庁のリストも拡大適用するよう促す。

改正発表と同日、トランプ大統領はジョージア州アトランタ市の物流大手UPSの施設を訪問し、今回の規則改正により「全国民のための、道路や橋、トンネル、高速道路などの改善につながる」とし、数兆ドルのコスト削減になると述べた外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます。産業界も概ね支持しており、全米製造業協会(NAM)のレイチェル・ジョーンズ副会長(エネルギー・資源政策担当)は「製造業の国内回帰には基礎的なインフラ整備が必要」と述べ、手続きの短縮による雇用創出や投資促進への期待を示した。他方、環境団体は今回の改正に反発し、政府を相手に訴訟を起こす構えをみせている。民主党のナネット・バラガン下院議員(カリフォルニア州)は「化石燃料業界が近隣住民の環境汚染を顧みずに有害な案件を進めることになる」と述べ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます、政権に対抗する姿勢を示した。

(藪恭兵)

(米国)

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