バイデン米政権、石油戦略備蓄から1億8,000万バレルの追加放出を決定

(米国、ロシア、ウクライナ)

ニューヨーク発

2022年04月01日

米国のバイデン政権は3月31日、石油戦略備蓄(SPR)を約1億8,000万バレル追加放出すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。米国は3月1日に国際エネルギー機関(IEA)加盟国と協調して6,000万バレルを放出したが(2022年3月2日記事参照)、その後も原油価格は13年8カ月ぶりに一時1バレル130ドルを超えるなど高騰し続けており、追加対策を求める声が高まっていた。

追加放出される約1億8,000万バレルについて、今後6カ月間にわたって日量100万バレルが継続的に追加放出される。IEAによれば、ウクライナ情勢により、ロシアの原油輸出量は日量300万バレル程度減少する見込みで、その約3割を穴埋めすることで、価格の抑制を狙う。また、IEAは4月1日に加盟国間の緊急会合を開催し、さらなる協調放出について議論する予定だ(ロイター3月31日)。また、バイデン政権は今回の声明を通じて、9,000以上ある掘削許可済み、かつ未利用の連邦公有地で原油が生産されていない場合、料金を徴収する法律の可決を議会に求めると述べ、実質的に石油会社の増産を促している。

他方、原油生産国の態度は冷ややかだ。3月31日に、OPEC加盟国とロシアなど非加盟の産油国で構成するOPECプラスの閣僚級会合が開かれ、米欧が3月10日のG7臨時エネルギー相会合共同声明PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)などを通じ再三、増産の加速を要請していたにもかかわらず、日量約43万バレル増産の現状を維持する決定を下した。米国は、声明の中で「(原油価格の高騰は)市場の需給要因ではなく、地政学的なものだ」と述べ、今回の高騰が一過性のものという認識を示している。

米国のガソリン価格は現在、1ガロン(約3.8リットル)当たり4.2ドルを超え、年初の3.3ドルに比べて30%ほど度高くなっている。中間選挙が11月に控える中、ガソリン価格の抑制はバイデン政権の最優先事項の1つだ。報道によると、バイデン政権は、夏季の販売が禁止されている高濃度エタノール混合ガソリン(E85)の一時的な禁止解除を検討しているようだ。E85はガソリンよりも安価で、エタノールの混合量を増やせばガソリン小売価格は下がるが、高温の下ではスモッグを発生させる可能性があるため、夏季の使用は禁止されている。所管する環境保護庁(EPA)は「政府全体でさまざまな可能性を検討している」とコメントするにとどめているが(ロイター3月30日)、これらの一連措置が原油価格およびガソリン価格の抑制につながるか注目される。

なお今回、電気自動車(EV)用電池などに使用されるリチウムやニッケルなどの鉱物が、大統領権限による増産指示など、民間企業に対し強制力のある手段を講じることが可能な国防生産法の対象品目に追加されたことも発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますされた。声明では「クリーンエネルギーの未来を支える鉱物や材料について、中国および他国への依存を減らす」と述べられており、国内生産を強化していく方針が明確になっている。

(宮野慶太)

(米国、ロシア、ウクライナ)

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