米内務省、連邦公有地での石油・ガス開発リース計画を発表、バイデン政権で初

(米国)

ニューヨーク発

2022年04月21日

米国内務省は4月15日、連邦公有地における石油・ガス開発リース販売計画を再開すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。ジョー・バイデン大統領は就任直後に署名した大統領令で、石油・ガス開発のための連邦所有地・水域の新規リースを一時停止し、リース許可・手続きの包括的な見直しを行うよう指示していたが(2021年1月29日記事参照)(注)、ウクライナ情勢によるエネルギー供給逼迫および高インフレを前に、政策の修正を余儀なくされたかたちだ。

内務省によれば、今回の計画により約14万4,000エーカー(約583平方キロ)の土地が石油・ガスの掘削に利用できるようになるとしている。また、2021年11月の石油・ガスリース制度改革の報告書を踏まえて(2021年12月6日記事参照)、事業者が連邦政府に支払うロイヤルティー率を事業利益の12.5%から18.75%に引き上げるほか、リース販売に当たってはコミュニティからの意見募集や温室効果ガス排出量の分析を行うとしている。2022年4月18日には、今回の決定に沿って6月21、22日にワイオミング州で同リース販売を行うという具体的な追加発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますがなされている。

今回の発表については、環境擁護派から批判の声が上がっている。ワイルドアース・ガーディアンズは、声明で「バイデン政権は気候変動対策で良い話をしているが、現実には石油・ガス会社と手を組んでいる」と今回の対応を厳しく批判している。また、石油・ガス業界団体も、今回ロイヤルティー率が引き上げられたことや、当初の計画よりリース予定面積が約80%削減されていることを挙げて「政府がガソリン価格の高騰を真剣に受け止めていることを示すものは何もない」と述べるなど、不満の声を上げている。

戦略石油備蓄の放出やE15ガソリンの夏季販売解禁など(2022年4月1日記事4月13日記事参照)、今回の決定を含め、バイデン政権はエネルギー価格高対策に注力している。しかし、産油国のリビアが政情不安から国内最大の油田を閉鎖したことを受けて、一時落ち着いていた原油価格(WTI)は再び1バレル110ドル付近まで上昇するなど、政策効果は目立ったかたちでは表れていない。また、環境擁護派、石油・ガス業界双方に配慮したとみられる今回の決定は、結果として双方から批判の声が上がり、環境分野での意見調整の難しさが浮き彫りになったともいえ、バイデン政権には引き続き難しい意見調整が求められている。

(注)同大統領令について、裁判所は、石油・ガスリース販売を一時停止する権限は議会だけにあるとして、2021年6月に差し止め命令を受けている。

(宮野慶太)

(米国)

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