シンクタンク、ヒートポンプの運用費に関する分析結果を発表

(英国)

ロンドン発

2022年04月07日

エネルギー関連のシンクタンク「レギュラトリー・アシスタンス・プロジェクト(RAP)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」は、英国のヒートポンプとガスボイラーの運用費を比較した分析調査結果を発表PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)同機関のディレクター、ジャン・ローズナウ氏は3月29日、ツイッターで双方のコストが同額に近づいてきている外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますとした。同調査結果は、英国で以前から高騰しているガス・エネルギー価格、また4月1日から引き上げられた同国のエネルギー価格上限(energy price cap)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます2022年2月7日記事参照)も踏まえたもの(注1)。

RAPの調査結果によると、英国の世帯は高効率のヒートポンプを利用することで、ガスボイラー利用に比較して年間の暖房費を最大27%節約できる。また、導入費用もガスボイラーが平均2,700ポンド(約43万4,700円、1ポンド=約161円)、ヒートポンプが平均1万500ポンドとしているが、ヒートポンプについては、政府の補助金などにより、4,975ポンドまで削減されるとしている(3月31日付「タイムズ」など)。

政府は2020年11月発表の「グリーン産業革命のための10項目の計画」(2020年11月20日記事参照)の中で、2028年までに年間60万台のヒートポンプを住宅に導入する目標を掲げた。2021年10月に発表した「熱・建物戦略PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」(2021年10月25日記事参照)では、2035年以降、新たなガスボイラー導入の段階的削減の意図を示し、2030年までに購入・利用コストをガスボイラーと同等まで引き下げることを目標にした。目標達成に向け、ヒートポンプに切り替える世帯に向けて、補助金を提供する「ボイラー・アップグレード・スキーム」を2022年4月1日から導入(注2)。また、2022年度の予算案PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)では、省エネルギー材料・設備の導入にかかる付加価値税の軽減措置を延長し、2022年4月から2027年3月31日まで一時的に免税とするとしている(2022年3月31日記事参照)。

2021年の販売台数は2019年比でほぼ倍増

英国ヒートポンプ協会の推計では、英国の2021年のヒートポンプ販売台数は6万7,000台と、2019年の3万5,000台と比較し約倍増。一方で、他の欧州主要国と比較すると依然少ない。欧州ヒートポンプ協会(EHPA)によると、2020年の同販売台数では、フランスが39万4,000台で最多、イタリア(23万3,000台)、ドイツ(14万台)、スペイン(12万8,000台)と続く。

(注1)英国でのガス・電気の1キロワット時(kWh)当たりの価格上限はそれぞれ2021年10月1日~2022年3月31日期と比較して75%増、33%増となる。

(注2)イングランドまたはウェールズに居住する住宅保有者が対象。空気熱源のヒートポンプの場合5,000ポンド、地中熱源のヒートポンプの場合6,000ポンドを補助。

(オステンドルフ・七海・ありさ)

(英国)

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