2022年度予算案を発表、物価上昇に対する支援策発表

(英国)

ロンドン発

2022年03月31日

英国政府は3月23日、2022年度(2022年4月~2023年3月)の予算案を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます。エネルギー価格や物価上昇に伴う家計や企業への影響を踏まえ、各種支援策を盛り込んだ。

まず家計支援として、国民保険料の支払いが必要となる年間所得の閾値〔いきち、従業員の場合「National Insurance Primary Threshold」、個人事業主の場合「Lower Profits Limit(LPL)」〕を7月6日から1万2,570ポンド(約201万円、1ポンド=約160円)とし、4月6日~7月5日の9,880ポンドから2,690ポンド引き上げる。また、年間所得が6,725ポンドを上回りLPL未満の個人事業主については4月6日以降、国民保険料(クラス2)の支払い額を0ポンド(支払いなし)とした。さらに、3月23日から12カ月間、ガソリンやディーゼルにかかる燃料税を1リットル5ペンス削減した。住宅への省エネルギー材料・設備導入にかかる付加価値税の軽減措置は延長し、4月1日から2027年3月31日まで一時的に免税とし、2027年4月以降は5%の軽減税率へと戻すとしている。このほか、経済的に脆弱(ぜいじゃく)な層の生活支援のため、2021年9月に発表した5億ポンドの「家計支援基金」に、さらに5億ポンドを上乗せする。また、2024年4月から所得税を20%から19%へと削減する計画も示した。

中小企業支援では、条件を満たす場合に国民保険料の雇用主負担を削減する雇用手当の上限を4月から年間4,000ポンドから5,000ポンドとする。再生可能エネルギー発電や貯蔵に用いられる工場、機械のうち、条件を満たすものに対するビジネスレート(非居住用資産に対する固定資産税)免除と、低炭素暖房ネットワークへの税制優遇措置を1年前倒して4月から導入する。なお、2023年4月以降、資本控除制度や研究開発課税控除制度の改革を通じ、企業の投資にかかる税負担を削減する予定とした。

英国予算責任局(OBR)は同日、経済・財政見通しを発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます。2022年のGDP成長率について、2021年10月に発表した6.0%から下方修正して3.8%とした。インフレ率は世界的なエネルギーの高騰を受け、2022年第4四半期(10~12月)にピークを迎え、8.7%となるとの見通しを示した。ロシアによるウクライナ侵攻の動向や国際的な制裁の先行き不透明感に伴い、エネルギー価格が市場の予測以上に高騰する場合、短期的にはGDPが最大0.8%低下、インフレ率は2022年末に9.6%まで高まるとも予測した。

(山田恭之)

(英国)

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