中国におけるHSコードのバージョン違いに起因するトラブルに関する留意点

(日本、中国、韓国、ASEAN、オーストラリア、ニュージーランド)

中国北アジア課

2022年04月05日

日本を含めた15カ国が参加する「地域的な包括的経済連携(RCEP)協定」が2022年1月1日に10カ国について発効した。その後、2月1日には韓国について、3月18日にはマレーシアについて発効しており、4月1日時点で計12カ国で協定が適用されている(2022年1月6日記事参照)。経済産業省が公開した第1種特定原産地証明書の発給件数をみると、協定発効から2月末までで合計4,121件となった。主要な経済連携協定(EPA)の発効後2カ月間の同証明書の発給件数と比較すると、これまで最も多かった日タイEPA(2007年11月発効)の1,976件に対して、RCEP協定は2倍以上で、過去最多となっている(2022年3月22日記事参照)。

協定の利用が進むにつれ、協定の運用に関するトラブル事例も報告されている。特に、中国において、協定で適用されるHSコードの年版の違いによるトラブルが発生していると報告されている。この度、経済産業省とジェトロが中国におけるHSコードの運用に関して以下のとおり、留意点をまとめた。

まず、RCEP協定においては、現状では、2012版のHSコード(HS2012)に基づく品目分類番号を原産地証明書(CO)に記載することとされている(注)。しかし、通関システムで2022年版のHSコード(HS2022)が運用されている中で、中国への輸入通関時、HS2012に基づく品目分類番号が記載された原産地証明書を用いて輸入通関しようとすると、HS2022上の産品分類番号と一致しないケースでは、中国の通関システム上では手続できないという事案が発生している。

本件に係る運用について、日本政府が中国政府に確認したところ、「中国での通関申告で使用されているHSコード(HS2022)と原産地証明書上におけるHSコード(HS2012)が異なる場合、輸入者は中国の輸入通関システム上では入力できず、紙ベースで通関手続きを行う必要がある場合があるので、税関と事前に相談してほしい」との見解が得られた。

HS2012とHS2022で異なる品目分類番号になる品目を対象に、RCEP協定を活用して中国向け輸出を行う際、中国国内の各税関によっては上記の運用について、留意が必要の場合がある。

また、中国の原産地証明書発給システムも同様にHS2022で運用されている事例があるとの情報が事業者から寄せられている。日本への輸入においても、中国で発給された原産地証明書の一部には、HS2022に基づく品目分類番号が記載されているケースが確認されている。こうしたケースでも、HSコードの相違がHSのバージョンが異なることに起因する場合には、有効な原産地証明書として認められるので、日本税関に相談をすると良いだろう。

(注)ジェトロは、同協定のうち、物品の貿易(RCEP協定第2章)や原産地規則(同第3章)に焦点を当て、協定の活用方法や留意点について解説したRCEP協定解説書(2022年2月改訂版)を公開している。

(藤原智生)

(日本、中国、韓国、ASEAN、オーストラリア、ニュージーランド)

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