2021年下半期の貧困率は37.3%で改善も、高インフレで再び悪化か

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2022年04月28日

アルゼンチン国家統計センサス局(INDEC)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)は3月30日、世帯アンケート調査(EPH)の結果を発表した。2021年下半期の貧困率は37.3%で前期比3.3ポイント減、前年同期比4.7ポイント減だった。うち、極貧率は8.2%で前期比2.5ポイント減、前年同期比2.3ポイント減少した(添付資料図参照)。INDECが半期ごとに実施しているEPHは国内31都市(人口約2,900万人)を対象にしており、今回の調査では、貧困人口が約1,080万人、うち極貧人口は約240万人だった。

貧困層とは、基礎的食料・住宅・保健・教育・衣類その他の日常的な基礎的支出(基礎的全体バスケット、CBT)を十分に補う収入がない世帯・人口を指す。極貧層とは、基礎的な食料(基礎的食料バスケット、CBA)を補う収入がない世帯・人口を指す。2021年下半期のCBTは7万4,059ペソ(約8万1,465円、1ペソ=約1.1円)、CBAは3万1,834ペソだった。今回の調査によると、貧困世帯の平均収入は4万6,712ペソ(CBTの63.1%)、極貧世帯の平均収入は2万633ペソ(CBAの64.8%)にとどまった。

年齢層別にみると、0~14歳の貧困率は51.4%で最も高く、前期比2.9ポイント減、前年同期比6.3ポイント減と改善したものの、依然として高い水準だ(添付資料表参照)。

これらの数字を基に、「2021年下半期では前期に比べ、約92万400人が貧困から抜け出すことができた」と経済省が発表した(現地紙「バエ・ネゴシオス」3月30日)。識者の分析では、2021年の経済成長(注1)と失業率の減少(注2)などから、収入の改善が貧困率の減少につながったとしている。

しかし、2021年12月以降のインフレの加速(2022年4月25日記事参照)が、再び貧困率を悪化させる可能性が高い。2022年1~3月のCBAPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)は前年12月比で20.9%増、CBTが同17.8%増加した。また、第1四半期累計のインフレ率(前年12月比)は16.1%で、CBAやCBTの増加率が上回っているため、2022年上半期の貧困率は再び40%に近づく見通しだ。民間調査会社の調べでは、2021年10月から2022年3月にかけて、貧困率は既に38.6%に引き上がっている(現地紙「バエ・ネゴシオス」4月20日)。

高インフレと購買力の低下によって社会不満が高まる中、アルベルト・フェルナンデス大統領とマルティン・グスマン経済相は4月18日、非正規労働者、収入の低い自営業者、家事労働者、定年退職者の約1,300万人を対象とした経済的支援を行うと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。5月から6月にかけて、1人当たり1万8,000ペソが給付される。エコノミストらは「低収入の世帯にとっては短期的な支援になるが、根本的な解決にはならない」と指摘している。

写真 ブエノスアイレス市中心部で目立つ路上生活者の増加(ジェトロ撮影)

ブエノスアイレス市中心部で目立つ路上生活者の増加(ジェトロ撮影)

(注1)2021年のGDP成長率は10.3%。詳細は2022年3月29日記事参照

(注2)2021年第4四半期の失業率は7%。詳細は2022年3月29日記事参照

(山木シルビア)

(アルゼンチン)

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