2021年GDPは10.3%と4年ぶりのプラス成長、2022年は「乏しい」成長を予測

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2022年03月29日

アルゼンチン国家統計センサス局(INDEC)は3月23日、2021年第4四半期(10~12月)の実質GDP成長率が前年同期比8.6%、前期比(季節調整済み)1.5%と発表した(添付資料図参照)。2021年通年では前年比10.3%と2017年以来のプラスとなった。

GDPが大幅に伸びた要因は、新型コロナウイルス感染拡大の影響による厳しい行動制限措置で生産活動が停滞した反動だ。なお前年同期比の成長率が、2021年第2四半期および第3四半期の2桁の伸びから縮小して、第4四半期は1桁の伸びにとどまっており、反動増は一服したとみられる。

第4四半期の産業分野別成長率を前年同期比でみると、16分野のうち漁業を除く15分野がプラスになった(添付資料表参照)。通年では、農業・牧畜・狩猟・林業を除く15分野が前年比でプラスとなった。GDP全体を主に押し上げたのは、製造業と商業(卸売り・小売り)・修理業だ。

需要項目別にみると、第4四半期の前年同期比、通年の前年比のいずれにおいても全ての項目でプラスになった。全体を通して、通年で大きく押し上げたのは民間消費と総固定資本形成だ。

INDECの発表を受け、マルティン・グスマン経済相は3月24日、自身のSNSを通じて「2021年の成長は予想をはるかに上回った。3年連続のマイナス成長を乗り越え、数十年ぶりの記録的な成長を成し遂げた。この成長の原動力となった投資は前年比32.9%増加し、2004年以来の高い数字だった」と述べた。

他方、現地民間調査会社や報道機関は、「これらデータは、(パンデミックによる低成長からの)回復が一服したことを表している。2022年は、国民が実感できないほどの乏しい成長となる予測」と分析している。また、回復を妨げる原因は複数あるとし、その中でも特に懸念されているのは、インフレの加速(2022年3月17日記事参照)、政策金利の引き上げによる生産活動への影響、ウクライナ情勢の影響による生産コストの上昇、そして政治的要因だ。

与党連合内では、IMFとの合意をめぐって、アルベルト・フェルナンデス大統領が率いる中道左派と、クリスティーナ・フェルナンデス・デ・キルチネル副大統領が率いる急進左派による与党内での分裂が露呈した。フェルナンデス大統領による政権運営が困難となっていることから、先行き不透明感が増しているとみられている(現地紙「アンビト」および「インフォバエ」3月24日)。

(山木シルビア)

(アルゼンチン)

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