3月のインフレ率は過去20年間で最高の6.7%、年率は55.1%

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2022年04月25日

アルゼンチン国家統計センサス局(INDEC)は4月13日、2022年3月の消費者物価指数(CPI)上昇率を発表した。全国平均値は前月比6.7%に達し、単月では2002年4月以来過去20年で最も高い上昇率となった。前年同月比(年率)では55.1%上昇した(添付資料図参照)。第1四半期累計の上昇率(前年12月比)は16.1%で、1991年以来の高い水準となった。

INDECによると、季節により価格が変動する生鮮食品や観光サービスなどの財・サービスは3月単月で前月比6.2%上昇した。エネルギーや公共サービスなど価格統制された財・サービスは8.4%と大きく加速した。季節要因と価格統制要因を除いたコアインフレ率は6.4%上昇し、18カ月連続で高止まりしている。

3月単月を費目別にみると、前月比で大きく上昇したのは、教育(23.6%)、衣類・靴類(10.9%)、住宅・光熱・その他燃料(7.7%)。教育が急上昇した主な原因は、新学期の開始に伴うもの。衣類・靴類は、季節の変わり目に加えて、輸入規制による品不足も影響しているとみられる。CPIに占める比重が大きい食品・飲料(酒類を除く)は、2月に7.5%上昇したのに続き、3月は7.2%。第1四半期累計では20.9%上昇した。3月に特に大きく上昇した品目は、食パン(24.8%)、鶏卵(21.6%)、コーヒー粉(19.0%)、フランスパン(17.7%)など。

民間のエコノミストは、3月のインフレ加速は、ロシアによるウクライナ侵攻を受けたコモディティー商品の国際価格上昇のほか、政府が価格統制しているエネルギーや公共料金の見直し(注)、国内の不安定なマクロ経済情勢が影響している、と分析している(現地紙「アンビト」4月13日)。

4月は既に、住宅などの共益費で20%、医療保険で6%、住宅の清掃サービスで12%、私立教育で9%の上昇がみられているため、単月のインフレ率は5%を超える見通しだ。民間のエコノミストらは「今後の単月のインフレ率が平均で4%台に落ち着いたとしても、年率では約65%となる」と警鐘を鳴らしている。

政府のインフレ対策は、主に生活必需品、肉類、野菜・果物、小麦粉などの約2,000品目の価格統制にとどまっている。マルティン・グスマン経済相は「マクロ経済政策でインフレ抑制は可能だが、明確な政治的支持が不足している」と訴え、与党連合内での中道左派と急進左派の分裂がさらに浮き彫りになっている。

写真 3月に大きく値上がりした、ブエノスアイレス市内で販売されている食パン(ジェトロ撮影)

3月に大きく値上がりした、ブエノスアイレス市内で販売されている食パン(ジェトロ撮影)

(注)公共料金は、INDECの指標では政府の価格統制対象財・サービスに含まれる。電気・ガス料金は、政令543/2020号外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますなどにより価格が統制されていたが、3月は約20%引き上げられた。5月には、公聴会の開催などを経て再び価格が見直される予定。

(山木シルビア)

(アルゼンチン)

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