米USTR、カナダのデジタルサービス税導入追求に懸念を表明、2022年外国貿易障壁報告書(カナダ編)

(米国、カナダ)

米州課

2022年04月11日

米国通商代表部(USTR)が3月31日に発表した2022年版外国貿易障壁報告書(NTE)(2022年4月4日記事参照)では、カナダに関する記述は前年から1ページ減り7ページだった。構成をみると、前年版では各国編の冒頭に記述のあった「貿易概観」が削除された以外は、前年と同様に(1)貿易協定、(2)輸入政策、(3)貿易の技術的障壁(TBT)・衛生植物検疫(SPS)障壁、(4)政府調達、(5)知的財産権保護、(6)サービス障壁、(7)デジタル貿易の障壁、(8)投資障壁の8項目を取り上げた。

今回のNTEでは、主な成果として、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)での知的財産(IP)条項での合意を挙げた。カナダは知的財産保護分野の取り組みが遅れているとして、2021年版スペシャル301条の「監視国」に指定されているが(2021年5月6日記事参照)、カナダはUSMCAにおいて、偽造品に対する執行、通貨貨物の検査、地理的表示(GI)に関する透明性、著作権の内国民待遇許与など、長年の懸念事項に対処し、カナダのIP環境は大幅に改善されると評価した。

輸入政策については、カナダ政府が乳製品輸入に設定している関税割当制度(TRQ)の運用がUSMCAに違反すると主張していた件で、USMCAの紛争解決パネルによる裁定が行われ、米国側の主張が認められたことを成果として挙げた(2022年1月6日記事参照)。USTRは、裁定結果に従って対応が進められるようカナダとの協議を継続するほか、米国産乳製品のアクセス制限につながり得る他の動きを引き続き注意深く監視していくとしている。

デジタル貿易の障壁では、USTRはカナダが2021年12月14日に発表したデジタルサービス税(DST)法案の撤回を求めていることを取り上げ(2022年2月24日記事参照)、米国企業にとって多額の遡及(そきゅう)的な税負担が生じる可能性があるDSTの導入に深刻な懸念を表明した。

NTEは、総論編と各国・地域編から成り、総論編は2022年4月4日記事参照。

(高山さわ)

(米国、カナダ)

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