タイ米USTR代表が議会公聴会で証言、対中政策で国内投資の重要性強調

(米国、中国)

ニューヨーク発

2022年04月05日

米国通商代表部(USTR)のキャサリン・タイ代表は3月30~31日、議会上下各院の公聴会で、バイデン政権の2022年の通商政策課題に関して証言を行った(下院歳入委員会外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます上院財政委員会外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

各公聴会の冒頭証言で、タイ代表はUSTRが3月初めに公表した「2022年の通商政策課題」(2022年3月2日記事参照)に沿い、政権の優先課題やこれまでの成果を列挙した。中国との関係については、2021年10月に開始した第1段階の米中経済・貿易協定の履行状況などに関する協議(2021年10月13日記事参照)が困難を極めているとし、「古い脚本のページをめくる必要がある」と指摘した(注)。具体的には、米国の競争力を維持するために新たな国内政策ツールと米国経済への戦略的投資を必要とし、米議会で審議が進んでいる対中競争法案(2022年2月7日記事参照)の可決を促した。

公聴会では民主、共和両党の議員から、対中政策やバイデン政権が提唱している多国間経済枠組み「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」の交渉内容や、既存の貿易協定などに基づく執行強化など、広範囲に質問が及んだ。マイク・クレイポー上院財政委少数党筆頭理事(共和党、アイダホ州)らから、IPEFで関税障壁を扱わないとしている政権の方針について問われたタイ代表は、関税削減・撤廃には取り組まない一方、高い労働・環境基準を交渉することで経済的に意義のある成果を出すと主張した。

アール・ブルーメナウアー下院歳入委貿易小委員長(民主党、オレゴン州)を含む両党の議員からは、他国との自由貿易協定を促す声が上がったが、タイ代表は慎重姿勢を保った。同代表は、これまでの貿易自由化により製造業・サービス業を問わず、企業や雇用の国外流出が起きたと指摘。新型コロナウイルス感染拡大やロシアによるウクライナ侵攻で、非友好国にサプライチェーンを依存することの問題が明らかになったとの認識を示した。下院の対中競争法案に含まれている、重要なサプライチェーンに関わる米国企業の対外投資に対する審査制度の是非については「あらゆる手段を講じるべき」と応じた。

対中政策をめぐって、タイ代表は「関与の次なる段階に進む必要がある」とし、第1段階の合意では扱わなかった問題にも焦点を当てると述べた。一方、同合意で定められた紛争解決手続きを利用する意向があるか問われた際には、「全ての選択肢が机上にある」と答えた。3月に一部の復活が認められた1974年通商法301条に基づく対中追加関税の適用除外措置(2022年3月24日記事参照)について、対象品目を拡大するよう求められたタイ代表は「必要に応じて今後も検討する」と述べるにとどめた。

(注)USTRが事前に公表した議会証言の原稿では、「中国は貿易上の義務を自らの利益に合致するかたちでしか順守しないことが明らかになった」と指摘し、中国に行動を変えるよう迫る以上に、同国の不公正な経済政策・慣行から米国の価値や経済利益を守ることに注力すべきと記している。

(甲斐野裕之)

(米国、中国)

ビジネス短信 0684974e4d915eed