米下院、半導体支援含む対中競争法案を可決、上院と調整へ

(米国、中国)

ニューヨーク発

2022年02月07日

米国議会下院は2月4日、中国との長期的な競争を念頭に国内の半導体産業などを強化するための約3,500億ドル規模の法案「America COMPETES Act of 2022(H.R.4521)」を222対210の賛成多数で可決した。上院では2021年6月に下院案の対となる約2,500億ドル規模の「米国イノベーション・競争法案(USICA、S.1260)」が可決されており、今後、上下両院の合同委員会を設立して、両法案の相違点を調整する。調整した統一法案があらためて両院で可決されれば、大統領の署名を経て成立となる。

法案の早期可決を後押ししているジョー・バイデン大統領は同日の声明で外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます「下院は、強靭(きょうじん)なサプライチェーンと低価格、より多くの製造と良質の製造業雇用を米国にもたらし、21世紀に中国やその他の国々をしのぐための重要な投票を行った」と評価し、上下両院に可能な限り早期に統一法案を送付するよう求めた。米国内の産業界が最も関心を寄せている点は、両院案のいずれにも含まれている5年間で520億ドルとなる国内半導体産業強化のための補助金となっている(2022年1月26日記事参照)。米半導体産業協会(SIA)もバイデン大統領同様、下院での法案可決を称賛し、統一法案の早期成立を要請する声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを出している。

一方で、上院案と下院案では大きく異なる点が存在し、それらが両院での調整作業を難航させる可能性が指摘されている。特に通商関連の条項で相違が目立っており、主なものとして次が挙げられる。

  • 上院案にのみ含まれている条項:1974年通商法301条に基づく対中追加関税の適用除外措置の拡大。
  • 下院案にのみ含まれている条項:アンチダンピング・相殺関税法の執行強化、条件該当国(実質的に中国のみ)からの少額輸入(800ドル以下)への関税免除措置の適用停止、安全保障上懸念のある米国企業の対外投資を審査するプロセスの設立、貿易により失業した労働者を支援する貿易調整支援プログラム(TAA)の更新・拡充(現行TAAは6月末に失効予定)。

上院では民主・共和両党の議席数が50対50で、フィリバスター(議事妨害)ルール(注)も存在する中、民主党主導の法案可決には少なくとも共和党議員10人の賛成が必要となる。こうした状況から、USICAの通商条項の策定段階では、産業界に近い共和党の意向がくみ取られたものとみられる。他方、下院では僅差ながらも民主党が過半数を維持しているため、労働者重視の条項などを盛り込んだようだ。ジーナ・レモンド商務長官は法案可決後のインタビューで、通商条項が両院間また両党間で最も議論があり、合意の少ない部分と認めつつ、これらが「交渉全体を停滞させることがないようにしなければならない」と発言している(2月4日付「ポリティコ」)。

(注)上院では通常、法案可決にはフィリバスター(議事妨害)を抑え込むため、クローチャー(討論終結)決議に必要な60票の賛成が必要となる。

(磯部真一)

(米国、中国)

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