米国1月の貯蓄率6.4%、2013年12月以来の低水準

(米国)

ニューヨーク発

2022年03月01日

米国商務省経済分析局(BEA)は2月25日、1月の個人収入支出状況を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますし、貯蓄率が6.4%になったことを明らかにした。

貯蓄率は、新型コロナウイルス感染拡大以前は7%程度で推移していたが、「新型コロナ禍」による行動制限などが理由で大幅に上昇し、ピーク時(2020年4月)には33.8%を記録。2021年9月以降、再び7~8%程度まで低下していたが、2022年1月は前月比1.8%ポイント減の6.4%となった。これは、2013年12月の6.0%に次ぐ低水準だ(添付資料図参照)。背景には、堅調だった2022年1月の小売り消費に加えて(2022年2月21日記事参照)、子供1人当たり年間最大2,000~3,600ドルの税額控除措置が2021年12月に失効したことがある。税額控除措置の延長はビルド・バック・ベター法案に盛り込まれていたが、同法案は現時点で成立のめどが立っていない(2021年12月23日記事参照)。

貯蓄率は「新型コロナ禍」以前の水準を下回っているが、パンデミックによる行動規制などの中で、米国内で必要以上に貯蓄された額(超過貯蓄)が約2兆5,000億ドルに達したという推計もあり(2021年11月25日記事参照)、人々はこれらの貯蓄を取り崩しながら消費しているものとみられる。しかし、「ニューヨーク・タイムズ」紙と調査会社モメンティブが最近行った調査によると、パンデミック前よりも貯蓄が「多い」との回答は16%なのに対して、「少ない」との回答は50%に及んだ。また、「多い」と回答した人の割合は、低所得者層(年収5万ドル未満)で9%だったのに対して、高所得者層(年収10万ドル以上)で31%だった。この結果を踏まえると、超過貯蓄の多くが裕福な層に偏っている可能性がある。

ニューヨーク連邦準備銀行の調査によると、2021年の家計の債務残高は前年より1兆ドル増の15兆6,000億ドルと、2007年以来最大の伸びになっており(2022年2月16日記事参照)、家計のバランスシート悪化が進んでいる。加えて、高インフレやそれに応じた連邦準備制度理事会の金融引き締め姿勢による金利上昇は、こうした悪化に拍車をかけ、低所得者層を中心に消費の減速をもたらす可能性があり、貯蓄率の今後の動向に留意していく必要がある。

(宮野慶太)

(米国)

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