米国の10月貯蓄率は7.3%、3カ月連続低下、新型コロナ前の水準に戻る

(米国)

ニューヨーク発

2021年11月25日

米国商務省経済分析局(BEA)は11月24日、10月の個人収入支出状況を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますし、貯蓄率が7.3%になったことを明らかにした。低下は3カ月連続となり、新型コロナウイルス感染拡大前の水準にほぼ戻ったかたちだ(添付資料図参照)。

貯蓄率は、新型コロナウイルス感染拡大以前は7%程度で推移していたが、「新型コロナ禍」による行動制限などを要因に大幅に上昇し、ピーク時(2020年4月)には33.8%まで上昇した。その後、行動制限の緩和に連動して推移し、2021年5月以降は10%前後で落ち着いていたが、9月になって8.2%に大幅に低下、10月もさらに7.3%まで低下することとなった。背景には足元の堅調な消費状況があると考えられ、小売売上高は9月、10月と連続して上昇しており(2021年11月18日記事参照)、クレジットカードのローン信用残高も9月は前月比8.3%増と高い伸びを見せている(2021年11月11日記事参照)。

こうした動きと連動するように、家計の債務残高が最近になって増加しており、ニューヨーク連邦準備銀行が11月9日に発表したデータ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでは、2021年第3四半期(7~9月)の家計の債務残高が初めて15兆ドルを超え、中でもクレジットカードのローン残高は2四半期連続で約170億ドル増加している。ニューヨーク連銀リサーチオフィサーのドンフン・リー氏は「パンデミックに伴う財政的支援が終了するにつれ、パンデミックの最中にみられた消費の減少や(過去の)ローン残高返済によるクレジットカード利用残高の(減少)傾向が、逆転し始めている」と述べた。また、家計の債務残高増加によるデフォルト懸念を念頭に「パンデミックによる制限が解除され、消費が正常化する中で、クレジットカードローンの使用金額と利用残高はまだ低いレベルではあるが、パンデミック前の水準に戻りつつある」と述べている。

人々は貯蓄を取り崩しながら消費していると考えられるが、日本の内閣府の分析では、「新型コロナ禍」の中での行動制限などにより、米国内で必要以上に貯蓄された額(超過貯蓄)は2021年第2四半期(4~6月)時点で約2兆5,000億ドルと推計されており、足元の消費増加の金額から見ればまだ余力があると考えられる。年末商戦に向け、消費者の購買意欲は一層高まる一方、供給網の混乱や物価高騰などの懸念材料も挙げられており、年末の米国消費の動きに注目が集まる。

(宮野慶太)

(米国)

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