米家計、2021年債務は前年より1兆ドル増の15.6兆ドル、2007年以来最大の伸び

(米国)

ニューヨーク発

2022年02月16日

米国ニューヨーク連邦準備銀行(NY連銀)は2月8日、家計債務と信用に関する報告書を公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。その中で、2021年末の家計の債務総額は15兆5,800億ドル、過去1年で約1兆ドル増加しており、2007年以来で最大の伸びになったことを明らかにした(添付資料図参照)。

2021年の債務総額のうち、住宅ローン残高は11兆2,500億ドルで前年から8,600億ドル増となった。低金利や新型コロナウイルス感染拡大の影響により、郊外に自宅を求める動きが拡大したことなどを背景に、2021年に組成された住宅ローンが4兆5,000億ドルを超えたことが主な要因。また、NY連銀は、今後の金利上昇を見越して住宅ローンの借り換えが増加していることも動きの特徴の1つとしている。また、自動車ローン残高が1兆4,600億ドルで前年から800億ドル増となり、住宅ローン以外の債務では最も増加している。NY連銀は、自動車価格の高騰により、消費者がより多くの借り入れが必要になったことを要因としている。クレジットローン残高は8,600億ドルで前年から400億ドル増だが、2019年末の残高9,300億ドルに比べると低い水準にある。非住宅ローン残高のうち最も金額の大きい学生ローン残高は1兆5,800億ドルで、前年から210億ドル増となった。NY連銀は「過去20年近くで最小の増加幅」としており、パンデミック下で行われているローン返済の一時停止措置が影響しているとみられる(2021年12月24日記事参照)。

家計の債務総額は高水準にあるものの、ローン延滞率は比較的低水準にある。NY連銀によると、2021年12月下旬時点で未払い債務の2.7%が延滞されているが、これはパンデミック前の2019年第4四半期と比べると2.0ポイントも低い水準にあり、パンデミック下で積み上がっている貯蓄と各種の返済猶予プログラムが寄与しているとみられる。

高インフレを背景に、連邦準備制度理事会(FRB)は金融引き締めを急ぐ(2022年1月27日記事参照)。家計の債務残高は歴史的な高水準にあるものの、現時点ではデフォルトなど悪い動きは目立っていない。しかし、金利が今後上昇すれば利払い費がかさんでいくことから、現状の高インフレに加えて家計をさらに圧迫していく可能性があり、金利を含めた家計債務の今後の動きに留意が必要だ。

(宮野慶太)

(米国)

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