インド・カナダ両政府、包括的経済連携協定の交渉再開に合意

(インド、カナダ)

ニューデリー発

2022年03月22日

インドのピユシュ・ゴヤル商工相は3月11日、同国を訪問したカナダのメアリー・エング国際貿易・輸出振興・中小企業・経済開発相と閣僚会合を行い、両国間の包括的経済連携協定(CEPA)の交渉を正式に再開することに合意した。また、正式な交渉妥結前にアーリープログレス貿易協定(EPTA)を暫定的に結ぶことで、特定の品目や規制に関して先行して自由化を進めることも検討すると表明した。EPTAには、原産地規則や衛生植物検疫措置、紛争解決なども盛り込むとした。

閣僚会合後の共同声明では、特に農業分野で具体的な言及がなされた。インド産のトウモロコシやベビーコーン、カナダ産のサクランボや木材など双方の農産品の市場アクセスや、カナダ産豆果の対インド輸出時の病害虫リスク管理体制の構築のほか、カナダ側がインドの農業・加工食品輸出振興局(APEDA)を有機食品の適合性検証機関として認定できるかの検証を迅速に行うことなどを発表した。インドへの豆果輸出に際しては、インド政府は臭化メチル薫蒸処理を輸出国に求めているが、カナダ産豆果についてはこれを除外し、カナダ側の体制構築が整うまで一時的に罰則の対象から外すことを検討するとした。

農業以外の分野では、医薬品や希土類(レアアース)などでの相互協力の重要性について触れた。また、観光や都市開発、科学技術やイノベーションなど幅広い分野でも、両国が連携を深めていきたいとしている。

インドの貿易統計(2021年)によると、インドの対カナダ輸出は35億5,201万ドル(国別では30位)、輸入は27億8,289万ドル(34位)だ。全体に占めるカナダ貿易の割合は大きくないものの、収支は黒字となっている。対全世界で恒常的な貿易赤字を抱えるインドにとって、カナダは貿易収支の改善に貢献する重要な貿易相手国と言える。なお、カナダにとってインドは輸出相手国として14位、輸入相手国としては13位だ。

インドは日本を含めた12カ国・地域と自由貿易協定(FTA)や経済連携協定(EPA)を締結しているが、過去5年間は協定の効果を見極める姿勢に転じ、当初は参加していた地域的な包括的経済連携(RCEP)協定の交渉からも2019年11月に離脱した(2020年11月20日記事参照)。しかし、2022年に入ってからは、1月に韓国とのCEPA改定交渉再開(2022年1月18日記事参照)や英国とのFTA交渉開始(2022年1月18日記事参照)に合意したほか、2月にアラブ首長国連邦(UAE)とのCEPAを締結するなど(2022年2月24日記事参照)、主要国との2国間交渉を積極的に推進している。

(広木拓)

(インド、カナダ)

ビジネス短信 c2421b1422c5b011