RCEP15カ国署名、インド政府は静観

(インド)

ニューデリー発

2020年11月20日

ASEAN10カ国、日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランドの15カ国は11月15日、第4回東アジア地域包括的経済連携(RCEP)首脳会合をオンラインで実施し、RCEP協定に署名した(2020年11月16日記事参照)。同協定については、インドも当初から交渉に参加してきたものの、2019年11月にタイで開催された第3回首脳会合で「未解決のまま残されている重大な課題がある」として妥結に難色を示して以降、交渉のテーブルから遠ざかっていた。難色を示す最大の要因は、インドにとって最大の輸入相手国である中国からの輸入増加による貿易赤字の拡大とみられる。2020年6月には印中国境係争地帯で両軍が衝突し、インド国民の対中感情は悪化。RCEPへの加入はさらに難しくなったとの見方が続いていたとおり、インドが交渉に戻ることはなかった。

インド政府は、今回のRCEP署名について正式なコメントを出していないが、S.ジャイシャンカール外相は署名翌日の11月16日に行われた式典での演説外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、「過去の貿易協定は幾つかの分野で産業化の遅れをもたらした。将来的にもこうした協定は、多くがわれわれにとって有利ではないグローバルコミットメントの中に、インドを押し込めるだろう。開放性と効率性を主張する人々は全体像を提示していない」と、RCEPの名こそ出さなかったものの、貿易協定について慎重な見方を示した。

現地報道は、おおむね政府のRCEP離脱判断に追従するトーンが強く、安価な中国製品のインド市場流入を防いだ効果などを評価するものが多い。他方で、少数ながら一部の記事においては、「貿易による利益を獲得するため、そしてRCEPのルールにインドの意見を反映させるためにも、インドは遅かれ早かれRCEPに参加すべき」(「エコノミック・タイムズ」紙11月17日)との論説がみられた。また、今回の共同宣言文の付帯文書では、RCEP協定署名国は署名後にいつでもインドと交渉を開始できること、さらに、インドは加入に先立ちオブザーバーとしてRCEP会合に参加できることなどが定められた。これについて、「RCEPのドアをインドに向けて開かれたものとするために、日本が大きな役割を果たした」と、日本がインドの加入に向けて主導的な役割を果たしてきたことに触れる報道もあった(同上)。

(磯崎静香)

(インド)

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