英政府、インドとのFTA交渉開始を発表

(英国、インド)

ロンドン発

2022年01月18日

英国政府は1月12日、インドとの自由貿易協定(FTA)の交渉を開始すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますし、翌13日に同FTAの交渉方針PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を公表した。ニューデリーを訪問中のアン・マリー・トレビリアン国際通商相は13日、インドのピユシュ・ゴヤル商工相と会談し、正式に交渉を開始することを確認した。

英国とインドとのFTAは2021年5月、英国のボリス・ジョンソン首相とインドのナレンドラ・モディ首相が会談し、合意した中期的な行動計画「2030ロードマップ」の中で、将来、交渉を開始することが明記されていた(2021年5月13日記事参照)。

英国政府は、同FTAにより、2019年のインドとの貿易額(財・サービスの輸出と輸入の合計)233億ポンド(約3兆6,581億円、1ポンド=約157円、財については添付資料「表1 英国の対インド品目別輸出」、「表2 英国の対インド品目別輸入」参照)を2030年までに倍増させる狙い。また、英国の重要な輸出品であるスコッチウイスキーや自動車に対し、現在それぞれ150%、125%の関税が課せられていることを例に挙げ、関税撤廃で全体の輸出額が最大68億ポンド増加すると試算。また、英国から輸入する風力タービン部品の15%の関税などの障壁をインド側が撤廃することで、インドのクリーン産業向けの輸出拡大を見込んでいる。さらに政府は、同FTAが英国全体の経済を押し上げることに加え、インド企業による国際投資が既に英国全体で9万5,000人の雇用を支えていることに触れ、国内の雇用拡大にも期待した。

同FTAに向けた交渉の優先分野としては、物品貿易やサービス貿易、良好な規制慣行(GRP)・規制協力、透明性、通信、金融サービス、デジタル貿易、投資、知的財産権、貿易と競争、イノベーション、政府調達、環境とクリーン成長、汚職防止、貿易と開発、貿易救済措置、紛争解決、中小企業、労働、貿易と男女共同参画などの幅広い分野の方針を明示。特に、環境、労働、食品安全、動物福祉の高い基準には妥協しないとしている。また英国政府は、貿易協定を交渉する際に、国営医療サービス(NHS)を保護する考えを示した。

英国政府は、同FTAは、インド太平洋に貿易をあらためて集中させるという英国の戦略において大きな前進となるとした。また、インドとの新たな経済パートナーシップは、巨大なアジア太平洋貿易圏である、環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP、いわゆるTPP11)への加盟と並んで、英国政府にとって同地域に自由で公正な貿易を支える基盤をつくることになるとしている。

(宮口祐貴)

(英国、インド)

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