EU司法裁、法の支配違反に対しEU予算の執行停止を認める規則を適法と判断

(EU、ポーランド、ハンガリー)

ブリュッセル発

2022年02月18日

EU司法裁判所(CJEU)は2月16日、加盟国に対するEU予算の執行の一時停止を可能にする条件設定規則外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを適法と判断(プレスリリースPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます))した。条件設定規則は、EU名義の共同債券を財源とする復興基金の設置を採択する際に、加盟国による復興基金を含めたEU予算の不適切な使用を防止し、EUの財務上の利益を守る目的で採択されたメカニズムだ。加盟国による、法の支配の原則に対する違反が認められる場合に、欧州委が同規則の手続きを発動した上で、EU理事会(閣僚理事会)の特定多数決により、当該加盟国へのEU予算執行の一時停止などの措置をとることができる。同規則は2021年1月1日から適用を開始していたが、法の支配などをめぐって欧州委と対立するポーランドやハンガリーは、同規則がEU条約に違反しているとして、CJEUに提訴していた。

今後の焦点となるのは、予算執行の一時停止措置の発動をめぐる欧州委の動きと、ポーランドとハンガリーの出方だ。欧州委はこれまで、同措置の発動に関して、CJEUによる司法判断を待つ、との姿勢を示してきた。欧州委は、今回の判決を受け、同措置の発動に関する指針を数週間以内に策定した上で、条件を満たしていると判断できれば、発動する用意があるとしている。また、同措置の早期発動を求めている欧州議会(2021年10月25日記事参照)において、条件設定規則の報告者(ラポーター)を務めるペトリ・サルバマー議員(フィンランド選出、欧州人民党グループ)は2月16日の会見で、政治的な理由で発動をためらっている、と欧州委の姿勢を批判。今回の判決により、欧州委が同措置を発動しない根拠がなくなったとして、直ちに実施するように求めた。

一方で、同措置の対象となる可能性の高いポーランドとハンガリーは、今回の判決はEUの基本原則に違反しているとして、CJEUを批判している。特にポーランドは、ポーランド憲法裁判所に対して、規則の同国憲法との合憲性の判断を求めている。同裁判所に関しては、EU法の優越性を否定する判断(2021年10月12日記事参照)を出したことから、欧州委は、同裁判所の独立性やその判断に関して、CJEUへの訴訟手続きを開始している。ポーランドは、問題の発端となった、裁判官に対する懲罰制度を廃止する改正案を発表するなど一定の譲歩を示しているものの(2022年2月15日記事参照)、問題全体の解決の糸口は見えていない。

EUの一般予算だけでなく、復興基金の執行が一時停止される可能性も

条件設定規則に基づき、加盟国への予算執行の一時停止措置を欧州委が発動し、EU理事会が承認した場合、当該加盟国への復興基金もその対象に含まれることになる。欧州委は現在、同措置の発動の判断とは別に、法の支配に対する懸念などを理由に、ポーランドとハンガリーの復興レジリエンス計画の審査を保留している(2021年9月17日記事参照)。同措置の発動から承認までに、当該加盟国の反論などが予想されることから、最低でも9カ月かかるとみられているが、同措置が承認された場合、当該加盟国の何らかの譲歩により復興レジリエンス計画が承認されたとしても、復興基金の執行も一時停止される可能性がある。

(吉沼啓介)

(EU、ポーランド、ハンガリー)

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