ポーランドの復興レジリエンス計画承認に遅れ

(ポーランド、EU)

ワルシャワ発

2021年09月17日

欧州委員会は9月7日、ポーランドが司法制度をめぐって、EUの基本理念である法の支配や裁判官の独立性を担保していないのにもかかわらず、十分な是正措置を取っていないとして、ポーランドに制裁金を科すようEU司法裁判所に要請する決定をしたことを発表した。

これを受けて同日、ポーランドのズビグニェフ・ジョブロ法相は、この決定はポーランドの主権を制限し司法制度を脅かすものだとし、「欧州委員会がポーランドの憲法秩序に干渉する権利はない」と記者会見で述べた。

また、ジョブロ法相は「欧州委がポーランドの司法制度問題と復興レジリエンス計画(復興計画)の承認を結び付け、是正措置を取らないとポーランドによる復興計画を承認しないと暗に脅している」とも主張した。

ポーランドは5月3日に復興計画を欧州委に提出しており(2021年5月17日記事参照)、政府は7月22日に欧州委との実務レベルの交渉を無事に終了したと発表していた。しかし、本来なら、同国の復興計画に対する欧州委の正式な審査完了の回答期限は8月1日だったのにもかかわらず、いまだに回答が得られていない。

一方で、他のEU加盟国は続々と欧州委による審査とEU理事会(閣僚理事会)による承認を受け、前払い金の拠出も順次実施されている(2021年8月4日記事参照)。

9月8日には、ミハウ・ドボルチク首相府長官が「欧州委がポーランドの復興計画の審査を進めていることを確認した」と発言した。また同長官は、「ポーランドのメディアでは一部の欧州委メンバーの発言が過剰に解釈されており、報道されているポーランドへの復興基金の拠出が差し控えられるような事態は起こらない」としているが、具体的な承認のめどは立っていない。

複数の報道によると、欧州委のディディエ・レンデルス委員(司法担当)は「(ポーランドの司法制度の独立性担保への対応を指摘する)ヨーロピアン・セメスター(注)における国別勧告案と復興計画は関連性がある」と発言しており、ポーランドなどの一部加盟国の復興計画の承認手続きの遅れを示唆している。

(注)EUレベルの経済・財政政策を協調する枠組み。

(今西遼香、ニーナ・ルッベ)

(ポーランド、EU)

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