欧州議会、ポーランドへのEU予算執行の一時停止に向けた措置発動を欧州委に要請

(EU、ポーランド)

ブリュッセル発

2021年10月25日

欧州議会のダビド=マリア・サッソーリ議長は10月21日、「法の支配」が確保されていない加盟国へのEU予算の執行を一時停止させる「法の支配メカニズム」に関して、欧州委員会をEU司法裁判所(CJEU)に提訴する準備を開始したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。欧州議会は、欧州委は「法の支配メカニズム」を発動させる義務があるにもかかわらず、その義務を履行していないとし、ポーランドへのEU予算の執行の一時停止に向けた同措置の発動を強く求めた。

背景にあるのは、ポーランドにおける法の支配をめぐるEUとの対立だ。特に、10月7日のポーランド憲法裁判所によるEU条約の一部に対する違憲判断(2021年10月12日記事参照)に関して、欧州議会は21日、EUの価値に対する攻撃だとする非難決議外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを採択しており、欧州委のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長も19日、欧州議会で演説外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますし、この違憲判断は「EUの法秩序の一体性に対する直接的な挑戦」として、強い懸念を表明している。一方で、ポーランドのマテウシュ・モラビエツキ首相は、EU法の優越性は憲法には及ばないとし、違憲判断を擁護する姿勢を強調していることから、この対立はさらに悪化している。

こうした中で、欧州議会が欧州委に対して強く求めているのが、「法の支配メカニズム」の発動だ。同措置は、現行の中期予算計画と復興基金の成立と同時に採択された条件設定規則外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます2020年12月15日記事参照)に規定されたもので、2021年1月1日から適用されている。欧州委が同措置を発動し、EU理事会(閣僚理事会)が加盟国による法の支配の原則に対する違反を認めた場合、当該加盟国に対するEU予算の執行が一時停止されることになる。欧州議会はこれまでも、欧州委には法の支配の原則の違反の疑いのある加盟国に対して、速やかに同措置を発動する義務があるとして、「法の支配メカニズム」の発動を求めてきた。欧州委は発動に向けた準備をしているとしつつも、具体的な対応はとっていない。

サッソーリ議長は今回の発表で、11月2日までに欧州委が同措置を公式に発動しない場合は、欧州委を義務不履行でEU司法裁判所に提訴するとしている。条件設定規則では、欧州委には同措置の発動に関する一定の裁量が認められていることなどから、欧州議会がEU司法裁判所に提訴した場合も、欧州議会の主張が認められる可能性は低いとみられる。欧州委は、ポーランドとの対話による解決を重視するとしており、同措置の発動に関するガイドラインを策定中としている。ただし、同じく、法の支配をめぐりEUと対立しているハンガリーとポーランドがこの規則の適法性をめぐりEU司法裁判所に提訴していることから、同措置の発動については、EU司法裁判所の判断を待つと述べている。

10月21日に開催された欧州理事会(EU首脳会議)でもこの件について協議が行われたが、シャルル・ミシェル常任議長は、ポーランドとの解決に向けた政治的な対話を続けることが重要だとして、同措置の発動に慎重な立場を示した。なお、今回の欧州理事会後に発表された総括(2021年10月25日記事参照)には、法の支配に関する文言は含まれていない。

(吉沼啓介)

(EU、ポーランド)

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