ポーランド、トゥルフの褐炭炭鉱をめぐるチェコとの紛争終結で合意

(ポーランド、チェコ、EU)

ワルシャワ発

2022年02月15日

ポーランドのマテウシュ・モラビエツキ首相は2月3日、チェコのプラハでペトル・フィアラ首相と会談し、両首相は、ポーランド南西部トゥルフの褐炭炭鉱をめぐる紛争を終わらせることで合意した。また、チェコは、EU司法裁判所(CJEU)に対する訴訟の申し立てを取り下げることも約束した。今回の合意で、ポーランドはチェコに4,500万ユーロの賠償金を支払う。うち1,000万ユーロは、トゥルフの褐炭炭鉱を運営するポーランドのPGE(エネルギー大手)から、同炭鉱に近いチェコ北部のリベレツの自治体に支払われる。また、ポーランドは、チェコへの地下水の流出を防ぐために地下バリアーを設置するなど、汚染や騒音の対策も講じる。今後5年間にわたり、チェコ側はこれらの内容の履行を監視する。

この紛争は、チェコが、チェコ国境に近いトゥルフ炭鉱の採掘活動により国境地帯の村で地下水の枯渇や粉じんによる大気汚染などが起きていると主張したのにもかかわらず、ポーランド政府が同炭鉱の操業の継続を2026年まで承認したことで、対立が激化していたもの。チェコは2021年2月に、炭鉱の閉鎖を求めてEU司法裁判所に提訴していた。同裁判所は同年5月、判決が出るまで操業を停止することを命じたが、ポーランドがこれを拒否したため、9月から1日当たり50万ユーロの履行強制金支払いを科していた(EU司法裁判所プレスリリースPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます))。しかし、ポーランドはこの支払いについても拒否してきていたため、EUと見解が異なっている「法の支配」の解釈(2021年10月25日記事参照)も含め、EUとの対立も激化していた。今回の和解は、ポーランドとチェコの交渉により成立したが、ポーランドがこれまで同裁判所から科されてきた罰金の扱いについては、まだ正式な発表はなされていない。

ポーランドの司法制度をめぐっては、ポーランドのアンジェイ・ドゥダ大統領が2月3日に、EU側が問題視している、ポーランドの最高裁判所の「規律部」(Disciplinary Chamber、注)を廃止する改正案を発表した。ドゥダ大統領はまた、2月7日にブリュッセルを訪問し、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長や欧州理事会(EU首脳会議)のシャルル・ミシェル常任議長と会談を行った。主要な議題はウクライナ周辺国の状況についてだったが、ドゥダ大統領は同改正案についても言及している。

なお、ポーランドの復興レジリエンス計画(2021年9月17日記事参照)は、いまだにEUから承認されていない。

(注)ポーランド最高裁判所内部に設けられた裁判官の懲戒機関で、EUは裁判官の独立性や公平性を脅かすものとしている。

(今西遼香、マルタ・ゴロンカ)

(ポーランド、チェコ、EU)

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