社会保険庁が新型コロナ感染労働者の休業補償申請プロセスを簡素化

(メキシコ)

メキシコ発

2022年01月13日

メキシコの社会保険庁(IMSS)は1月11日、新型コロナウイルスに感染して休業しなければならない労働者の休業補償(60%給与補償)の申請プロセスの簡素化を発表した。IMSSは、2020年3月から新型コロナウイルス感染による休業の場合、ウェブサイトやモバイルアプリを通じた申請を可能にしていたが、これまではウェブサイトなどを通じた症状の申告に加え、診療所や検査機関における新型コロナウイルス検査で陽性が出ることを休業補償(休業許可)の要件(注)としていた。今後は、インターネットなどを介した症状の申告のみで休業許可が得られるようになる。検査証明書の取得目的で診療所や検査機関に患者が密集することにより、感染がさらに拡大することを防ぐ狙いだ。

申請プロセスとしては、住民登録単一コード(CURP)と郵便番号を入力してシステムにログインし、症状や既往症の有無、ワクチン接種の有無などについてのアンケートに答え、Eメールなどのコンタクト情報と補償金を受け取る口座の18桁の口座番号(CLABE)を入力する必要がある。また、添付資料として、身分証明書(公的ID)、銀行口座の残高証明書(CLABEと口座名義の確認のため)、顔写真をアップロードする。新型コロナウイルスの検査証明書をアップロードすることもできるが、症状がある人については義務ではない。詳細については、IMSSのウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを参照。

休業期間は7日間に短縮する一方、新型コロナ警戒信号の要件を廃止

今回の制度変更は、検査要件の省略だけではない。休業補償期間は、従来の10日間から7日間に短縮される。IMSSのソエ・ロブレド長官によると、この期間短縮はオミクロン株による感染者の回復が従来よりも早いことに対応したもの。他方、従来の制度では、新型コロナ警戒信号(2020年5月15日記事6月2日記事6月15日記事8月31日記事2021年7月26日記事参照)の色が緑の州は、ウェブサイトなどを通じた簡易申請ができなかったが、今回の変更により、信号の色にかかわらず、全ての州で簡易申請が可能になる。これは、信号の色が緑でありながらも、新規感染者が急増している首都メキシコ市などの状況に対応したものだ。

なお、ウェブサイトなどを通じた申請では、原則として新型コロナウイルス感染症の症状があることが条件となるが、無症状であっても検査で陽性が判明している場合は、検査証明書をアップロードして提出することにより、5日間の休業許可を得ることができる。陽性が確定していない濃厚接触者についての補償はないため、濃厚接触を理由に休業させる場合は企業が負担するしかない。

休業許可書を労働者から受領した雇用主は、同労働者を休業期間中は働かせることができない。休業期間中の給与の60%はIMSSが支払うことになるが、社会保険法第96条に基づき、IMSSが補償金を支払うのは休業4日目以降だ。そのため、最初の3日分の給与や4日目以降の残り40%分を、企業として補償するところもある。

(注)従来の制度では、症状申告により新型コロナウイルス感染が濃厚な場合は、仮許可として3日間の休業許可症を発行し、その後で検査結果の提出を要求していたが、IMSSによる補償金の支払いが発生する4日目以降の本許可を取得するためには、新型コロナウイルス検査で陽性が出なければならなかった。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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