経済活動の再開に向けた信号システムと指針を発表

(メキシコ)

メキシコ発

2020年06月02日

政府は5月29日、アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール大統領の早朝記者会見において、6月1日以降の経済社会活動再開に向けた信号システムに基づく活動規制を発表した。また、同日夕刻の官報で保健省令外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを公布し、経済活動再開に向けて事業所が順守する特定技術指針を発表した。信号システムは5月13日に既に発表されていた(2020年5月15日記事参照)が、今回、6月1~7日に適用される州別の信号の色と、その判断基準が明らかになった。信号の色は橙のサカテカス州を除き、31州(メキシコ市含む)が赤となった。

信号の色に応じて経済活動を再開する際に全ての事業所が順守する指針が、公布された保健省令の別添文書の位置づけの特定技術指針である。同指針に基づき各事業所は、(1)経済活動の種類、(2)所在地の感染症リスクレベル(信号の色)、(3)事業所の規模(従業員数)、(4)事業所内の特徴、に応じた対策をとり、事業を継続する。具体的な対策を促す目的で、企業規模に応じた職場の安全衛生対策チェックリストが用意されており、小規模零細企業が55項目、中規模企業が77項目、大企業が87項目となっている。また、優先的に対策を採るべき項目がそれぞれ15項目指定されている(詳細は添付資料を参照)。

赤信号でも操業できる「不可欠な活動」(指針の表2に一覧がある)については、専用サイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで企業データを入力するとともに、画面上で上記チェックリストの自己評価をして送信する必要がある。ただし、建設、鉱業、輸送機器製造に関連する活動で、5月18日以降に同サイトで既に自己評価をし、社会保険庁(IMSS)の承認を得ている企業(2020年5月19日記事参照)については、新たな自己評価の提出は不要。なお、6月1日以降はIMSSから承認通知が届くのを待つ必要はなく、自己評価後に即時自動承認される。また、「不可欠な活動」以外の企業は、自己評価の提出は任意である。

一部の州政府から強い反発

今回、サカテカス州以外は全て赤信号となった。信号の判定基準は、感染の増減傾向、入院患者の増減傾向、病床利用率、新規感染確定率などを基に判断すると発表されたが、入院患者も少なく病床利用率も低い州でも赤になった。これについて連邦保健省のウゴ・ロペス-ガテル次官は、「急激な制限緩和による感染の再活性化を回避するため、一つでも指標が赤であれば他に関わらず赤にした」としている。この決定に対し、ハリスコ州、ヌエボレオン州、コアウイラ州など少なくとも7つの州が連邦の信号には従わないと表明している。また、既に独自の信号構想を発表しているグアナファト州(2020年5月26日記事参照)は、連邦政府の信号に関わらず、独自の信号の運用を続ける考えを示している(主要各紙5月29~30日)。メキシコ市については、独自の計画(2020年5月21日記事参照)は維持しつつも、信号の色は連邦政府と連携を取り、1日単位ではなく週単位の変更とする。なお、複数の連邦政府閣僚レベルの発言によると、信号が橙や黄色の場合の具体的な活動規制(どの活動を再開し、どのような制限を設けるか)は州政府が詳細を決定するとみられ、今後は州政府の方針にも注意する必要がある。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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