物価上昇の影響広がるロシアCIS、2022年はグリーン化推進へ、ジェトロ・セミナー

(ロシア、CIS)

欧州ロシアCIS課

2022年01月24日

ロシアCIS地域の社会・経済状況は、新型コロナウイルスの影響から回復基調にあり、カーボンニュートラルの達成に向けた取り組みが見られる。一方で、市中では資源価格の高騰や物価の上昇の影響が出ている。ジェトロは1月21日にロシアCIS地域を管轄する現地事務所長が登壇するオンラインセミナーを開催し、ウィズ/アフターコロナの現状と展望について解説した。

ジェトロ・モスクワ事務所の梅津哲也所長は、ロシア国内では2021年からインフレ懸念が上昇しているが(2021年12月22日記事参照)、在ロ日系企業の業績は好調(2021年12月8日記事参照)、国内の経済成長率は新型コロナウイルス感染拡大前の水準に戻り、2022年以降は2~4%台で推移する見込みだと説明した。また、ロシア政府は2060年までにカーボンニュートラル(2021年11月10日記事参照)を達成すると表明したが、国内の各産業は新規設備投資で負担が増加することに難色を示しており、政府と企業の方向性が一致していないと指摘した。

サンクトペテルブルク事務所の島田憲成所長は、人材確保にロシアの各大学と提携する在ロ日系や外資系企業が増加しているが、ロシア人学生は日本での就労について関心が低く、欧米に偏っていると説明。また、2021年の新車乗用車・小型商用車市場の販売台数の推移をみると、中国車の台頭が目立ち前年比で改善したが、2013年以降から市場全体が縮小傾向にあり、今後も厳しい状況が続くと説明した。

タシケント事務所の高橋淳所長によると、ウズベキスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタンは新型コロナウイルス感染拡大の影響により、財政状況の悪化やビジネス交流が制限されているが、ロシアや中国などが中央アジア市場への参入を積極的に進めている。一方で、各国では生活用品の価格上昇が続いており、一般市民の生活に影響が出ていると説明した。

在カザフスタンのコレスポンデントを務める増島繁延氏は、カザフスタンの政治、経済、外交について述べた。1月に発生した暴動後、権力を掌握したトカエフ大統領は国内の改革を進めていくと発表した(2022年1月14日記事参照)。また、2060年までにカーボンニュートラルの達成を目指して既存設備の近代化と原子力発電所の建設を計画している(2021年9月13日記事参照)。外交面ではロシアを最重視しているが、欧米、中国、近隣諸国との友好政策を維持する方針と述べた。

イスタンブール事務所の佐野充明所長はコーカサス3カ国について説明した。アゼルバイジャンはナゴルノ・カラバフ紛争後のインフラ整備を最重要の政策課題としており、友好国の協力を受けながら物流網の整備に注力している。2030年までにカーボンニュートラルの達成を目標としており、日揮や東電設計も支援をしている。アルメニアは対立していたトルコからの輸入を1月から解禁。ジョージアと日本間では2021年7月に投資協定、租税条約が発効した。豊富に有する水資源を活用するため、東京電力も支援をしながら水力発電所建設プロジェクトが進められている。

(小野塚信)

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