主要政策金利を7回連続で引き上げ、一層のインフレ対策へ

(ロシア)

モスクワ発

2021年12月22日

ロシア中央銀行は12月17日、主要政策金利(キーレート)を20日から年利7.5%から8.5%に引き上げた。主要政策金利が8.5%となるのは2017年9月以来4年3カ月ぶり。2021年3月以降、7回連続の引き上げとなった。2020年は新型コロナウイルス感染拡大により停滞した経済の刺激策や、中銀のインフレ目標(4%)への誘導策として金利引き下げが行われたが(2020年6月26日参照記事)、2021年は真逆の対応となった(添付資料図参照)。

背景にあるのは、インフレ懸念が高まっていることだ。2020年からロシアでは食料品を中心にインフレ基調で推移している。連邦国家統計局によると、2021年1~11月の消費者物価上昇率は、砂糖が前年同期比35.8%増、卵が24.5%増、ひまわり油が23.9%増などとなっている。中銀は2021年のインフレ率を8.1%と予想している。

中銀は12月17日付のプレスリリースで、10月に発表した経済見通しを上回る勢いでインフレが進行しているとの認識を示した。背景にあるのは、供給側の制約により需要超過が続いていることと、消費者が将来の物価上昇を見越した買い急ぎによるインフレ期待がある。中銀のエリビラ・ナビウリナ総裁は記者会見で、インフレの要因は、a.農産品の収穫時期の遅れなどの問題、b.新年休暇に向けた外国旅行需要、c.部品の供給不足による自動車生産の停滞など時限的なものが含まれるものの、需給のインバランスが根本にあるとの認識を示した。

今回の引き上げは金融市場関係者の想定の範囲内だったといえる。経済紙「ベドモスチ」(12月12日)の事前調査では、エコノミスト19人中14人が1.0ポイントの引き上げを予想していた。市場関係者は金利引き上げによるインフレの抑制効果、実質金利が上昇することで投資流入が期待できると指摘する(「RBK」「ロシア新聞」12月15日)。

中銀は2022年2月に行われる次回の理事会でさらなる利上げの可能性も示唆した。その一方で、当面の利上げは今回が最後になるとの見方もある。ソフコムバンクのミハイル・ワシリエフ首席アナリストは「インフレのピークは過ぎた。2022年にはインフレは4%台に下がる」と指摘。今後の中銀の金融政策は徐々に緩和が進むと予想している(「ロシア新聞」12月15日)。

(梅津哲也)

(ロシア)

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