騒乱による損失額は最大で25億ドルと経済専門家が試算

(カザフスタン)

モスクワ発

2022年01月21日

燃料価格値上げに対する抗議活動(2022年1月5日記事1月7日記事参照)に端を発した混乱が全土に及んだカザフスタン。政府はインターネットを遮断し、抗議活動に関する情報の拡散を防いでいる。抗議活動が現政権に対する全国的なデモに発展するのを危惧したためとの見方もある。

インターネットの遮断は市民生活に不便をもたらすだけではない。暗号資産を支えるグローバルなネットワークの計算能力の低下を招き、世界第2位となった暗号資産採掘(2021年5月31日6月28日11月17日記事参照)や、カザフスタン経済にも大きな影響を与える危惧がある。以下に経済専門家の見方を紹介する。

ロシア政府系経済シンクタンクの戦略発展センターのタチヤナ・ラドチェンコ第1副所長は1月13日、抗議行動による経済的損失は今後の状況次第で最大25億ドルに達すると試算する。同副所長は「1月初旬にインターネットが遮断されたことによる損失だけで1億4,400万ドル」との見方だ(ノーボスチ通信1月13日)。

カザフスタンの国家企業家会議所「アタケメン」は13日、略奪などの被害に遭った事例は経済の中心地アルマトイ市を中心に1,500件以上と発表した。被害を受けたのは商業施設が大部分を占め、そのほか飲食店や金融機関などだ。アタケメンは13日時点の被害額を1,000億テンゲ(約260億円、1テンゲ=約0.26円)前後と推計する。

カザフスタンの首都ヌルスルタン市にある世界経済・政策研究所のリディヤ・パルホムチク氏は、同国の主要産業である燃料エネルギー、鉱業部門は通常どおりの活動が続いたため、経済は全体としては安定的と指摘している(プライム通信1月14日)。その一方で同氏は、アタケメンの発表は中小企業が直接被害を被った額に限定され、実際の被害額はそれを上回るとの見方だ。

パルホムチク氏は、カシムジョマルト・トカエフ大統領が1月11日打ち出した安定した政治・経済・社会を構築するための抜本的制度改革(2022年1月12日記事参照)が功を奏せば、経済は短期間で安定するだろうとの期待感も示している。

(梅津哲也)

(カザフスタン)

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