タイ米USTR代表、米EU貿易技術評議会の活用に意欲

(米国、アイルランド、英国、EU、中国、日本)

米州課

2022年01月14日

米国通商代表部(USTR)のキャサリン・タイ代表は1月12日、アイルランドのシンクタンク、国際欧州問題研究所(IIEA)が主催したオンラインイベント外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで講演し、バイデン政権発足後の米欧通商関係の進展や今後の展望について語った。

タイ代表は、バイデン政権発足後の成果として、欧州との同盟関係の再建を強調した。具体的には、大型民間航空機補助金をめぐる貿易紛争の解決に向けたEUや英国との合意を挙げた。紛争解決により、米欧が航空産業における中国の非市場的慣行の対処に注力できると指摘した。また、2021年10月のEUとの鉄鋼・アルミニウム貿易に関する合意の結果、EUが1月に対米報復関税を停止したことを評価した。両合意について、タイ代表は2021年の通商政策全体の成果としても取り上げている(2022年1月7日記事参照)。そのほか、デジタル課税をめぐり、OECDで政治的に合意した、市場国に対し適切に課税所得を配分するルールの見直し(第1の柱)が施行されるまでの経過措置で、フランスなどと合意に至った(2021年10月22日記事参照)ことに触れ、これらの紛争解決の取り決めにより、200億ドル相当の関税が撤廃・回避されたと力説した。

タイ代表は米欧関係の将来に向けた取り組みとして、2021年9月に初めて開催された米国EU貿易技術評議会(TTC、2021年9月30日記事参照)の意義を指摘した。TTCは2021年6月の米EU首脳会談で設立に合意した枠組みで、新興技術の管理や国際的な通商課題での協力を目的とする。同代表は、バイデン・ハリス政権がTTCを活用し、米欧間で技術・イノベーション協力や共通の民主的価値の促進、基本的な労働権の保護により一層取り組むとした。さらに、米EUに日本を加えた3極パートナーシップの刷新(2021年11月18日記事参照)に基づき、2022年も他国の非市場的な政策・慣行がもたらす国際的な課題に対応すると語った。

なお、TTCに関して、タイ代表は講演後の質疑応答で、バイデン政権が構想を練る「インド太平洋経済枠組み」との共通点を指摘した。同枠組みの対象分野には半導体やデジタル経済、クリーンエネルギーなどが含まれ、伝統的な貿易協定を超える内容になるとされる。同代表は、同枠組みとTTCが通商関係が持続可能性や強靭(きょうじん)性、包摂性、競争力に焦点を当て、それらを支えるものにするという目的で類似しているとの見方を示した。一方、TTCが米EU間の貿易協定に発展するかとの問いには、TTCは何かの代替物や前兆ではないと答えるにとどめた。米国とEUはオバマ政権期の2013年に貿易協定の交渉を開始したが、締結には至っていない。

(甲斐野裕之)

(米国、アイルランド、英国、EU、中国、日本)

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